演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第54回・2016年・横浜
 

薬物療法における補完代替療法のリスクとベネフィット

演題番号 : S5-4

[筆頭演者]
大野 智:1 

1:大阪大学・大学院医学系研究科・統合医療学寄附講座

 

補完代替医療(療法)」とは、西洋医学とともに用いることで治療効果を高めたり副作用を抑えたりすることを目的とした「補完医療」と、西洋医学に取って代わるような新しい治療法としての「代替医療」を組み合わせた用語になる。この二つは別々に異なるものもあるが、多くは分けることが困難であり両者をまとめて補完代替医療(療法)と総称している。具体的には、健康食品・サプリメント、鍼灸、ヨガ、瞑想、アロマセラピー、温泉療法、音楽療法、カイロプラクテック、伝統医療など多岐にわたる。
厚生労働省がん研究開発費(旧がん研究助成金)による研究班の調査では、補完代替療法に「関心を持っている」「現在利用している」患者の割合は8割を超えることが明らかとなっている。その背景には、患者の自己健康管理への関心、治療選択における自己決定意識の高まりに加え、インターネットの普及によって個人による医療情報へのアクセスが容易になったことなどが指摘されている。しかし、患者の多くは、企業の宣伝・広告あるいは家族・知人に勧められるがまま、医師に相談することもできず、不安を抱えたまま利用している実態も指摘されている。
一方で、癌患者の診療に携わる医師は、医学教育で補完代替医療の系統だった講義・実習が行われていないために知識や経験がないことに加え、科学的検証の乏しい補完代替医療に関心を示さず興味の対象外として放置している場合が多い。しかし、購入した健康食品で謳われた効果とは裏腹に、健康被害が発生した報告は後を絶たず、また健康食品と医薬品との相互作用についても研究が進められてきている現状を踏まえ、医療者として決して看過できない状況になっている。また、近年、米国を中心に補完代替療法の臨床試験が進められ、患者の症状マネジメントに関してエビデンスが蓄積されつつもある。
そこで、医療現場における補完代替医療の現状ついて概説するとともに、各種補完代替療法に関するエビデンスの有無、薬物療法中におけるリスクとベネフィット、それらを踏まえた上でのコミュニケーションの留意点について解説する。

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