演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第54回・2016年・横浜
 

地方で薬物療法を行う際の問題点

演題番号 : S5-3

[筆頭演者]
宮田 佳典:1 
[共同演者]
長瀬 通隆:1、國枝 献治:1

1:佐久総合病院佐久医療センター・腫瘍内科

 

当院は長野県東信地区に位置する地域がん診療連携拠点病院である。診療圏は佐久地域、上田地域、群馬県吾妻地域と広い(大河ドラマ「真田丸」の真田昌幸の最大領地に近い)。この地域の特徴として、交通の便が悪く、大学から遠いため、大学医局からの医師派遣は期待しにくい土地柄であった。1990年代に開通した新幹線や高速道路により状況は変化しつつあるが、周辺大学医局に医師派遣要請に出向く院長の姿は武田、織田、上杉、北條、徳川と大名間を渡り歩いて生き残りを賭けた真田家の姿を彷彿させる。しかし当院以外の医療機関では医師不足が深刻であり、薬物療法における連携はほぼ不可能な状況である。従って、広い診療圏から薬物療法のために定期的な通院を必要とする患者は多く、患者及び家族の負担となっている。
もう一つの特徴は、高齢化である。長野県は日本一の長寿県であるが、裏を返せば高齢者が多いということである。平成25年のデータで、郡部では軽井沢町等の特殊な例を除いて全ての町村で高齢化率が30%を超えている(全国平均は25.1%)。高齢患者で、かつ同居家族が夫婦のみであったり独居の場合の薬物療法は継続が困難である。特に通院の負担は大きく、公共交通機関ほとんど機能していない地域のため、自ら又は家族の運転によるの通院が多い。高齢者の場合、日没以降の運転が心配と訴えられることが多く、治療時間の配慮が必要であるが、日没の早い冬期は路面凍結など特に問題となる。ちなみに長野県は高齢者免許保有率が全国1位である。
がん薬物療法においては、personalized medicineやprecision medicineという言葉が流行しているが、地方の患者は医学的な問題以外に特有の地域社会的な問題点を抱えていることが多く、通院頻度、治療所要時間、経済性、受診の必要な薬物有害反応の頻度や重篤度などを考慮した治療選択が必要となることが多い。当日は調査結果を元に具体的な提起を行う予定である。

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