演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第54回・2016年・横浜
 

高齢者に対する薬物療法

演題番号 : S5-1

[筆頭演者]
安藤 雄一:1 
[共同演者]
林 直美:1

1:名古屋大学・医学部附属病院・化学療法部

 

近年高齢化により高齢がん患者に薬物療法(化学療法)を行う機会が増えている。しかし、多くの臨床試験では高齢者(主に75歳以上)はその対象から除外されているため、日常臨床では高齢者に対する臨床試験のエビデンスが乏しいまま治療を行うことになる。そのため、不十分な治療効果や不要な強い副作用が起きている可能性がある。処方医の主観的な判断によって標準量から減量したり、多剤併用レジメンから一部の薬剤を省いたり、あるいは単剤療法など副作用の少ない別レジメンに変更せざるを得ないのが現状である。高齢者では薬物動態が非高齢者と異なることがあるため、非高齢者を主な対象とした臨床試験で安全性が確認された治療が高齢者にも安全とは限らない。通常の成人(非高齢者)の化学療法では疾患と病態、暦年齢、PS、臓器機能を根拠にレジメンを決定するが、高齢者では個体間差が大きいため、これらに加えてさらに別の指標が必要である。さらに、高齢者では経済的問題、社会サポート、認知機能など予後や治療の忍容性に関わる多岐にわたる因子が知られており、これらを含め包括的に評価することによって最善の治療を選択することが可能になると考えられる。一般に高齢者評価とは①日常生活動作(ADL) ②機能的生活動作(IADL)、③認知機能、④合併症、⑤多剤併用薬、⑥栄養状態、⑦社会サポート、⑧老年症候群などを多面的に評価することであり、患者や家族が自覚していなかった問題点を拾い上げることができる。一方、高齢者評価は老年医学領域で実施されてきた評価法であるため、化学療法を受ける高齢がん者にそのまま外挿するのではなく、がん領域の特性に合わせて発展させる必要がある。また、高齢であることを考慮すれば、強い副作用に耐えてまで余命を延ばすことに価値を見出している患者は少ないであろう。したがって、高齢者の化学療法では、その脆弱性(フレイルまたはバルネラビリティ)に加えて、治療目標が多様であることも理解して向き合わなければならない。最近CARG(Cancer and Aging Research Group)スコアの副作用の発生予測ツールとしての有用性が報告されたが、予後やQOLの改善といった重要なエンドポイントの証明も今後は重要である。

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