演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第54回・2016年・横浜
 

患者や組織の「今」に向きあう ~普遍的な価値観を支えに~

演題番号 : S3-6

[筆頭演者]
高田 由香:1 

1:静岡県立静岡がんセンター・疾病管理センター

 

がん患者は、社会の中で生活を営む社会的存在である。罹患後にどのように生きていくのか、そしてどのように死を迎えていくのか、さらに生命が尽きたあとの社会的な関わりをどう終結したいのか。
人が生きて、一生を終えていく過程を通して、人との繋がりや社会との関係を意識しながら一人ひとりの生活に目を向け、質の高い総合的な環境づくりの支援をしていくことが、ソーシャルワーカー(以下、MSW)に期待されている。
しかし、近年、わが国の医療機関は「在院日数の短縮化」「機能分化」「連携」が重要なテーマとなっている。なかでも「退院調整」が診療報酬に反映されるようになってから、看護師と社会福祉士がそれぞれの専門性を活かし、協働して医療・看護の視点から退院困難な要因の解決や介護・社会福祉サービスの活用等、退院に向けた総合的な支援が提供できる体制づくりを強化している。がん医療においても侵襲の少ない医療の提供も後押しとなり、入院期間の短縮化が加速し「退院調整」はがん相談支援センター専従のMSW業務の中心となっている。一方で患者本人を含む家族が抱える問題は、より複雑化・多様化・困難化している。もはや医療者や一人の専門職では十分な支援が出来なくなっており多職種の専門家がチームを組んで関わらないと、期限内に退院に導けない状況も生まれている。その際に、サービスのパッケージ提供にならないように、MSWは面接という技術を駆使して個々のニーズをくみ取り、双方が納得のいく調整を図ることが不満や苦情などのリスクを未然に防ぐことにもつながる。
患者に限らず、人生は意思決定の連続である。MSWは多様な価値観を認め、困難を乗り越える回復力への信頼を根底にもつ。そして患者を「環境の中の人」と捉え、環境との相互作用の中で起きている問題をアセスメントし、解決に向けての意思決定を助け介入するという専門性を持っている。病気のことを理解して治療を選択し、病気に立ち向かっていく生命レベルの支援、家庭や職場における関係の調整や役割遂行など生活レベルの支援。さらには2025年の多死社会が抱える介護・年金、おひとり様など社会レベルの問題への代弁機能を発揮しつつ、個々の生命に真摯に向き合うことが求められている。そのためにがん対策情報センター等が提供している研修や認定制度を活用し、知識や技術をブラッシュアップし、現任者の力量向上に努めなければならない。

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