演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第54回・2016年・横浜
 

骨軟部腫瘍に対する重粒子線治療

演題番号 : S11-4

[筆頭演者]
今井 礼子:1 

1:独立行政法人放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院

 

放医研では1996年から転移のない切除非適応骨軟部肉腫に対する重粒子線治療の臨床試験を開始し、2003年10月に先進医療と認められ、X線や重粒子線照射後再発腫瘍等の適応拡大を行い症例を蓄積しながら2015年3月までに総治療数は1000人を超えた。2016年4月切除非適応骨軟部肉腫に対する重粒子線治療は保険収載された。今までの患者内訳は、60代以上が約半数で30歳までの症例は14%であり、部位は骨盤が3/4を占め四肢は5%であった。組織型では骨腫瘍のうち約5%の発症数の脊索腫が最も多く軟部肉腫で最も発生頻度の多い脂肪肉腫は2%を占めるのみであった。20年間に重粒子線治療と手術(根治的切除可能例)との棲み分けが行われてきたと考える。代表的な放医研の治療成績は、骨肉腫の5年生存率は33%、軟骨肉腫は50%、軟部腫瘍全体の5年局所制御率は65%、5年生存率47%、術後再発を含む後腹膜腫瘍の5年局所制御率63%、5年生存率は50%であった。
重粒子線治療にはエビデンスがない、と言われる。エビデンスを得るための比較は何と行うのか?手術と重粒子線治療の比較か?保険適用条件は切除非適応骨軟部肉腫である。手術可能な体幹部骨肉腫に対する比較試験は必要だろうか?仙骨脊索腫はヨーロッパで手術と重粒子線治療の前向き観察研究が行われるので結果が待たれる。X線治療(陽子線治療)と重粒子線治療の比較か?ハイデルベルグでは仙骨脊索腫に対する陽子線と重粒子線の第2相比較試験が行われている。この試験は総線量が64GyE/16分割と低いため有害事象は有意差がでないだろう。局所制御率について脊索腫は他の肉腫より穏やかであるため有意差の評価には5年以上が必要ではないか。自験例では3年局所制御率93%、5年81%、局所再発例の29%が5年以上経過後である。切除不能体幹部骨肉腫に対して陽子線と重粒子線の比較試験をするべきか?まずは後向き研究の比較解析が必要だろう。BSCと重粒子線治療の比較か?これは保険適用である骨軟部肉腫には不要であるが、他疾患の中には重粒子線治療の適応条件、G3以上の有害事象頻度、医療経済の観点から論じる必要もあるかもしれない。骨軟部肉腫に対する重粒子線治療のエビデンスの確立は、希少がんが対象であることに加え、比較の対象の選別が難しいこともあると思う。

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