演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第54回・2016年・横浜
 

創薬開発研究を加速する肉腫細胞株パネルの構築

演題番号 : S11-3

[筆頭演者]
中 紀文:1 

1:大阪大学・大学院医学系研究科・整形外科

 

Evidence based medicine (EBM)の概念が提唱されて久しく,様々な領域でガイドラインの作成/更新作業が行われエビデンスに基づいた診断・治療が求められている.骨軟部腫瘍の分野においても,JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)やJMOG(骨軟部肉腫治療研究会)などの骨軟部腫瘍臨床研究グループが,新たなエビデンスの構築をめざし多施設共同臨床試験を精力的に立案/実施している.
悪性骨軟部腫瘍(肉腫)は手術治療以外には有効な治療法が乏しい間葉系悪性腫瘍であり,他のがん腫に比べて発症頻度は低いものの,罹患患者の約半数は遠隔(肺)転移を生じ不幸な転帰に至る希少難治性疾患の一つとされる.種々の集学的治療が試みられ多くの診療データが蓄積されているが,この10-20年は予後の改善がみられていない.肉腫に対する新規治療法開発は喫緊の課題とされているものの,研究材料となるべき肉腫細胞株や動物実験モデルは乏しく,臨床試験前に行うべき基礎研究や前臨床試験が十分実施されていない.
我々は,大阪大学整形外科骨・軟部腫瘍診療チームの有する国内有数の豊富な治療実績を背景に,臨床材料から種々のヒト肉腫細胞株の樹立および動物実験モデルを構築し,肉腫に対する質の高い病態/創薬解析ツールの基盤整備を行っている.さらにその構築・整備作業を通じて肉腫のがん化・転移機構の病態解明作業に取り組んできた.本講演では,複数のヒト肉腫細胞株の樹立過程と病態解明研究の一部を紹介し,その解析ツールを培養細胞系から動物実験モデル系へ連続的に使用可能なスクリーニング・プラットフォームとして活用することで得られた結果を基に,新規性・効率性の高い分子標的療法およびオーダーメイド医療の提案を行う.
非臨床の実験結果からセオリー(理論)の確立を求める我々の取り組みは,臨床結果から導かれるエビデンス構築作業の対局にあるのではなく,真のエビデンスに対し側面から理論的な裏付けを提供しようとするものである.

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