演題抄録

一般演題 (示説)

開催概要
開催回
第54回・2016年・横浜
 

コントロール困難な疼痛を伴う尿意切迫感を認めたS状結腸癌膀胱浸潤の一例

演題番号 : P75-5

[筆頭演者]
伊藤 英:1 
[共同演者]
芳賀 淳一郎:1、佐藤 佳宏:1、橋本 敏夫:1、菅野 博隆:1

1:米沢市立病院・外科

 

〔はじめに〕
コントロール困難な疼痛を伴う尿意切迫感を認めたS状結腸癌膀胱浸潤の一例を経験した。
〔症例〕
症例は59歳男性。血尿、濃尿を呈し、CTでS状結腸癌膀胱浸潤と診断した。膀胱腸瘻を認め、尿路感染と腫瘍浸潤部の膀胱壁内膿瘍により敗血症状態であった。絶食・補液・抗生剤投与で治療を開始したが感染制御が困難であったため手術に踏み切った。開腹S状結腸切除術+人工肛門増設術+膀胱部分切除術+大網充填術を施行した。膀胱全摘術は膀胱壁と骨盤内組織の癒着が強く困難であったため、可及的に腫瘍を摘出したが、膀胱部に腫瘍が遺残した。術後尿路感染は改善し、SOXによる化学療法を導入し退院となった。SOX投与中も腫瘍は増大し、膀胱壁内膿瘍の再増悪と尿路感染再発のため再入院となった。抗生剤で治療したが、感染は消退を繰り返した。また1日20回近くの頻尿とその際の疼痛を伴う尿意切迫感を認め、モルヒネを導入したが制御困難で不眠が続いた。疼痛時の興奮や高熱時の異常行動も出現した。ステロイドの使用や腎瘻の造設による尿路変更、腰部-仙骨部持続硬膜外ブロック、ドルミカム等を併用した。しかし呼吸抑制が出るレベルのモルヒネ投与でも疼痛を伴う尿意切迫感は完全には消失しなかった。次第に全身状態は悪化し、術後5ヶ月目に永眠された。
〔考察〕
本症例では腫瘍や膿瘍によってプロスタグランジンなどの炎症性物質が膀胱周辺で著明に増加し、求心性線維に作用し活動電位閾値の低下や興奮の増大、排尿反射の誘発を起こし、コントロール困難な疼痛を伴う尿意切迫感を引き起こした可能性があった。麻薬の投与に加え腰部-仙骨部持続硬膜外ブロックを併用し一定の鎮痛効果は認めたが、完全に痛みをとる事は出来なかった。
膀胱の知覚は下腹神経と骨盤神経が担当する事が知られており、下腹神経はTh12-L5由来の交感神経、骨盤神経はS1-S3由来の副交感神経である。本症例のように腰部-仙骨部硬膜外ブロックなどで疼痛を伴う尿意切迫感が取り切れない場合、下腹神経を抑えるため上下腹神経叢ブロックやTh11-12での胸部硬膜外ブロックを追加する事でさらなる疼痛コントロールが期待できた可能性があった。

キーワード

臓器別:大腸・小腸

手法別:緩和医療

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