演題抄録

ミニシンポジウム

開催概要
開催回
第54回・2016年・横浜
 

外科手術患者の術後せん妄予防における抑肝散の効果を検討するランダム化比較試験

演題番号 : MS43-1

[筆頭演者]
菅野 伸洋:1 
[共同演者]
山本 直人:2、佐藤 勉:2、山本 健嗣:2、田栗 正隆:3、湯川 寛夫:1,2、利野 靖:2、山中 竹春:3、益田 宗孝:2

1:横浜市立大学・附属市民総合医療センター・消化器病センター・外科、2:横浜市立大学・医学部・外科治療学、3:横浜市立大学・医学部・臨床統計学

 

背景) 近年高齢者の手術患者が増加し、術後せん妄に対する予防・管理がより重要となっている.一般的に抗精神病薬を用いて治療されているが,高齢者ではその使用に対するリスクもあり、現時点では第一選択薬に対するエビデンスもない.我々は、せん妄と類似した症状を呈する認知症の周辺症状を抑え,2010年認知症治療ガイドラインでもその効果を評価された抑肝散に着目した.
目的)高齢者外科待機手術患者に対して,抑肝散の術前・術後投与による術後せん妄発症の抑制効果を検討した.
対象)70歳以上の消化器および呼吸器悪性腫瘍の手術を施行予定の患者.
方法)横浜市立大学外科治療学教室関連の9施設の多施設共同試験として施行.術前に同意を得た後に抑肝散投与群(Y群)と非投与群(C群)の2群にランダム割り付けを行った.投与群は術前5-7日,術後4日間抑肝散1日7.5gを内服.術前の認知機能はMMSEを用いて評価、術後せん妄発生の定義はDSM-Ⅳに準じて行った.
主要評価項目は(1)術後せん妄発生率(2)安全性,副次的評価項目は(1)術後在院期間(2)せん妄重症度とし、目標症例数は200例とした.
結果)2011年4月から2015年3月に186例(両群ともに93例)が登録された. 男性120例(66%),消化器腫瘍167例(90%)。Y群・C群で性別、年齢、PS、術前MMSE、併存疾患等、背景因子に差を認めなかった。術後せん妄は14例(7.5%)に発生した。Y群6例(6.5%)、C群8例(8.8%)で両群間に有意な差なし。Y群では術前92例(99%)、術後85例(91%)で抑肝散が内服された。抑肝散との因果関係のあるG2以上の有害事象(血液・臨床検査値含む)は認めなかった。入院期間は平均でY群20.2日、C群20.8日、また発生したせん妄の重症度に関しても有意な差は認めなかった。入院中の併用薬(精神神経用剤や抗不安薬等)の使用において、Y群54例(58%)、C群69例(74%)と両群間に有意な差(P=0.026)を認めた。
考察)
高齢者への抗精神病薬による治療は、抗コリン作用による認知機能の障害やせん妄の誘発、過鎮静や起立性低血圧によるふらつきや転倒、循環系への副作用等が問題視されている。
結語)
イベント発生が当初予測より少なく、抑肝散投与による術後せん妄の予防効果は認められなかったが、精神神経用剤や抗不安薬等の使用頻度を有意に減少させた。高齢者の周術期における、薬剤による転倒や過鎮静などのリスクを減らすことにつながり有用であると考える。その他の結果もふまえて報告する。

キーワード

臓器別:その他

手法別:臨床試験

前へ戻る