演題抄録

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開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

大腸癌における組織学的EMT指標の臨床的意義に関する多施設研究

演題番号 : WS33-6

[筆頭演者]
上野 秀樹:1 
[共同演者]
金光 幸秀:2、関根 茂樹:3、石黒 めぐみ:4、伊藤 栄作:5、橋口 陽二郎:6、石原 聡一郎:7、近藤 福雄:8、島崎 英幸:9、長谷 和生:1

1:防衛医科大学校外科、2:独立行政法人国立がん研究センター中央病院大腸外科、3:独立行政法人国立がん研究センター研究所分子病理分野、4:東京医科歯科大学医学部附属病院大腸・肛門外科、5:東京医科歯科大学医学部附属病院病理部、6:帝京大学医学部外科、7:東京大学腫瘍外科、8:帝京大学医学部附属病院病理診断科、9:防衛医科大学校検査部

 

基礎研究にて癌の浸潤転移過程には癌細胞と腫瘍間質のcrosstalkによるEMTの誘導が重要であることが認識されているが、組織学的なEMT指標は確立されていない。先進部における脱分化所見として低分化胞巣(PDC)に、cancer-associated fibroblastの機能を反映する所見としてdesmoplastic reaction (DR)に着目し、これらを指標とした大腸癌におけるEMTの組織学的評価(Histology(EMT): Br J Cancer, 2014)の臨床的意義を多施設研究において評価した。
【方法】国内4施設において2007~08年に根治手術が施行されたStage I~III大腸癌1177例の病理標本を再顕鏡し、予後解析を行った。判定は予後等の臨床情報をblindとし、同一者が原発巣のHE標本のみを用いて行った。既報に準じ、PDCを対物20倍視野内のPDC数を基にG1~G3に(Am J Surg Path, 2012)、DRをkeloid-like collagen、myxoid間質といった細胞外基質の出現を基にmature~immatureに分類した上で(Gut, 2004)、両因子を統合的に評価し、対象症例をHistology(EMT) class A (G1かつmature)、class C(G3かつimmature), class B (それら以外)に分類した。
【結果】(1) PDCとDRは各々が独立して予後に影響を与える因子であることが確認された。(2) Histology(EMT) class A, B, C症例は各々321例、676例、180例であった。5年無再発生存率は各々95.0%, 80.3%, 47.7%であり(P<0.0001)、Stage別の検討でも予後を有意に分別した(P<0.0001-0.0003)。(3) Histology(EMT)のHarrell's C-index (0.70) はTNM stage (0.66)、T分類(0.67)、N分類(0.64)、組織型(0.56)、静脈侵襲(0.60)、リンパ管侵襲(0.60)、CEA値(0.59) 、腫瘍部位(0.55)、リンパ節検索個数(0.52)など、既存の臨床・病理因子のいずれより良好であり、AIC値の比較でも同様にHistology(EMT)の有意性が示された。Cox比例ハザードモデルによる検討において、class Aを基準としたHazard ratio (95% CI)はclass B: 3.7 (2.2-6.0) 、class C: 13.4 (8.1-22.3)であり、Histology(EMT)は独立性のある予後因子であることが多変量解析で示された。
【まとめ】大腸癌において、PDCとDRを用いた組織学的EMT指標はStage因子等既存の病理学的予後因子とは独立した予後因子であった。極めて予後が良好な症例と極めて不良な症例の選別に有用であり、治癒切除後の有用な治療指標になる可能性が示唆された。

キーワード

臓器別:大腸・小腸

手法別:バイオマーカー

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