ワークショップ
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乳癌術前化学療法における治療効果予測マーカーとしての血小板・リンパ球比の有用性 演題番号 : WS24-5
1:大阪市立大学大学院医学研究科腫瘍外科
【目的】近年,担癌患者の末梢血好中球・リンパ球比 (NLR) や血小板・リンパ球比 (PLR) がsystemic inflammatory responseを評価する指標として提唱され,予後予測マーカーとしての有用性が報告されている.PLRにおいては,乳癌の術前末梢血のPLRが独立した予後因子となることが報告されている.血小板はPDGF, TGFβ, PD-ECGFなどの増殖因子を最も大量に含んでいる組織の一つである.これらの血小板由来の増殖因子はしばしば癌細胞でも大量に作られており,癌の増殖や組織像との関与が指摘されている.またリンパ球は腫瘍に対する免疫反応を担っていることが知られており,そのためPLRは予後や化学療法感受性に関連する可能性があると考えられている.PLRにおいて予後との相関を示唆する報告はあるものの,化学療法感受性の検討は少ない.今回われわれは,PLRは術前化学療法 (NAC) の治療効果予測マーカーとなり得るかについての検討を行った.
【対象と方法】2007年から2013年にFEC followed by weekly paclitaxel ± TrastuzumabのレジメでNACを行った177例を対象とした.化学療法施行前の末梢血採血からPLRを算出した.カットオフ値を150.0と設定の上で高PLR群および低PLR群に判別し,化学療法感受性について検討を行った. 【結果】NAC症例177例において,治療効果はpCRを獲得し得た症例は67例 (37.9%) であり,non-PCR症例は110例 (62.1%) であった.高PLR群は67例 (37.9%) であり,低PLR群は110例 (62.1%) であった.低PLR群は,高PLR群と比較して有意に56歳より年配者 (p=0.001), 閉経後 (p=0.001) が多く, またpCR率が高かった (p=0.019).しかしながら,サブタイプなどその他の臨床病理学的因子との相関は認められなかった.さらに予後との相関を検討したところ,低PLR群は高PLR群と比較して無病生存期間 (p=0.004, log-rank) および全生存期間 (p=0.032, log-rank) ともに有意に延長が認められた.単変量解析では,リンパ節転移がないことおよび低PLRであることが予後良好因子であった.さらに多変量解析においても,リンパ節転移がないことや低PLRであることは独立した予後良好因子であった. 【結語】乳癌術前化学療法において低PLRは高い化学療法感受性を有し,PLRはNACの治療果予測マーカーとなりうる可能性が示唆された. |
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