演題抄録

ワークショップ

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

前立腺体積が前立腺癌の発生・増殖に与える影響

演題番号 : WS19-4

[筆頭演者]
出村 孝義:1 
[共同演者]
下田 直彦:1、日岡 隆矢:1、兼田 達夫:1、後藤田 裕子:2、村岡 俊二:2

1:JA北海道厚生連北海道厚生農業協同組合連合会札幌厚生病院泌尿器科、2:JA北海道厚生連北海道厚生農業協同組合連合会札幌厚生病院臨床病理科

 

【目的】大きな前立腺には小さな癌が多く、小さな前立腺にできた癌はHigh Gradeで進行癌が多い事が報告されている。我々は大きな前立腺の中では癌の増殖が抑制されており、そのため癌によるPSA産生が抑制されている可能性を報告してきた。この仮説が正しければ大きな前立腺では癌の増殖に関係する全ての腫瘍マーカーは無能となるはずである。そこで各腫瘍マーカーの診断精度と前立腺体積(PV)との関係を調べた。【方法】当科でテンプレート生検を行った1432例(前立腺癌(CaP);818例、非癌(NC);614例)を対象とし、PSA関連腫瘍マーカーの診断精度を比較した。Receiver Operating Characteristic (ROC)曲線下面積の比較はbootstrap法を用いた。PVが前立腺癌の発生・増殖に与える影響を調べるため年齢別の生検陽性率とPVの関係についても調べた。【結果】PV<50mlの群ではPSAもPSA density (PSAD)もCaP群の方がNC群より有意に高かった(共にp<0.001)。PV≧50mlの群ではPSAもPSADも両群で有意差がなかった(p=0.774、0.426)。PV<50ml群ではPSA、PSADのROC曲線下面積はそれぞれ0.67、0.75であったが、PV≧50ml群ではそれぞれ0.52、0.47と有意に低下していた(共にp<0.001)。PV別に年齢と生検陽性率を比較すると、PV<50mlでは50歳以下で16%であったのが61-65歳で57%まで上昇し、71-75歳で71%、81歳以上で88%と高齢になるほど急速に生検陽性率が上昇した。PV≧50mlでは51-55歳で14%、61-65歳で25%、71-76歳で25%、81歳以上で29%と、高齢による生検陽性率の増加は軽度であった。PV<50mlかつ血清PSA<10ng/mlの群とPV≧50mlかつ血清PSA≧10ng/mlの群を同様に比較しても全く同じ結果が得られた。【結論と考察】PV≧50mlの症例ではPSAもPSADも腫瘍マーカーとして無能である。これはPV≧50mlの症例で癌によるPSAの産生抑制を示唆する。また、PV<50mlの症例では70~80代の生検陽性率が71~88%であるのに対し、PV≧50mlの症例では高齢になっても生検陽性率は軽度の上昇を示すのみであり、この事からもPV≧50mlの症例では癌の発生・増殖が抑制されている可能性が示唆される。大きな前立腺では良性腺腫由来の血清PSA上昇により、癌ではない患者が多く生検されるため癌陽性率が低下するとの仮説は、PV≧50mlの症例ではPSADも診断能力を失う事や、PV<50mlかつ血清PSA<10ng/mlの群とPV≧50mlかつ血清PSA≧10ng/mlの群を比較しても同様な結果が得られた事から否定的と思われる。

キーワード

臓器別:前立腺・男性生殖器

手法別:診断

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