演題抄録

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開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

食道扁平上皮癌におけるMTH1発現の意義の検討

演題番号 : WS1-2

[筆頭演者]
秋山 真吾:1,2 
[共同演者]
佐伯 浩司:1、北尾 洋之:3、中司 悠:1、田尻 裕匡:1、堤 智崇:1、由茅 隆文:1、笠木 勇太:1、杉山 雅彦:1、中島 雄一郎:1、大垣 吉平:1、園田 英人:1、沖 英次:1、掛地 吉弘:2、前原 喜彦:1

1:九州大学大学院消化器・総合外科、2:神戸大学大学院医学研究科食道胃腸外科学分野、3:九州大学大学院医学研究院がん分子病態学講座

 

【背景】生体は様々な活動の副産物として活性酸素種(ROS)を発生する。ROSの働きによりグアニンやアデニンが酸化修飾を受ける。そのような酸化ヌクレオチドがDNAに取り込まれると、DNAグリコシラーゼの働きにより除去されるが、その過程でDNA鎖切断が誘導され細胞死が誘導される。MTH1(Mut T homolog 1)は、このように細胞毒性を発揮する酸化ヌクレオチドを浄化する活性を持つことから、MTH1阻害剤はROSレベルの高い癌細胞に特異的な抗腫瘍効果を発揮することが期待されている。今回、食道扁平上皮癌(ESCC)におけるMTH1発現に関して検討した。
【対象・方法】(1)ESCC細胞株(TE系9種)と正常細胞(BJ、MRC5)のMTH1発現レベルをWestern blot法、q-PCR法を用いて比較した。(2)1994~2011年に当科で根治切除術を施行した術前無治療のESCC症例84例について、MTH1発現を免疫組織化学染色にて評価した。症例の内訳は、平均年齢63.7歳、男性73例・女性11例、組織型は高分化型/中分化型/低分化型:19/48/17であり、病期はStage0/Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ:2/20/22/40/0であった(UICC第7版)。MTH1発現に関しては高発現、低発現の2群に分けて評価した。また、前述の症例のうち50例に関して、癌部・非癌部におけるMTH1 mRNA発現レベルをq-PCR法を用いて測定した。これらの結果に関して、臨床病理学的因子との関連を検討した。
【結果】(1)ESCC細胞株は、正常細胞株に比較して、MTH1タンパク発現、mRNA発現がともに高かった。またMTH1タンパク発現とmRNA発現には有意な正の相関を認めた(P=0.0068)。ESCC細胞株ではMTH1発現を抑制することで、細胞増殖を抑制することができた。(2)臨床組織検体におけるMTH1 mRNA発現レベルは正常部に比べ癌部で有意に高かった(P<0.001)。免疫組織化学染色では、全84例中、低発現群が64例(76.2%)、高発現群が20例(23.8%)であった。MTH1高発現群は低発現群に比べ、低分化型扁平上皮癌の割合が有意に高かった(10% vs 37.5%、P=0.0088)。疾患特異的5年生存率ではMTH1低発現群62.0%、高発現群23.1%と、MTH1高発現群で有意に予後が悪かった(P=0.0078)。多変量解析では、疾患特異的生存率において、深達度、MTH1高発現が独立した予後予測因子であった。
【結語】ESCCにおいて、MTH1高発現は疾患特異的生存において独立した予後不良因子であり、あらたな予後予測マーカー、治療標的となりうる可能性が示唆された。

キーワード

臓器別:食道

手法別:バイオマーカー

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