演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

がん診療研究開発のパラダイム変換と臨床試験

演題番号 : S4-6

[筆頭演者]
福島 雅典:1 
[共同演者]
小島 伸介:1

1:公益財団法人先端医療振興財団臨床研究情報センター

 

人類は今、未曾有の科学・技術の大革命期に生きている。健康・医療分野においてもそれは例外ではない。現在がん領域で進む革命は、がんの研究開発のみならず診断・治療体制を一変しつつある。それは分子医学革命を特徴づけるゲノム、分子免疫、さらに幹細胞研究の成果によるもので、わが国の研究者による発見・発明がその大きな部分を担っていることは誇りとしてよい。ドライビング遺伝子の発見による分子標的薬クリゾチニブはゲノムクリニカルシーケンシングの時代を切り開いた。トラメチニブは腫瘍の存立を維持する制御系の中枢にあるネック(萃点)を制御する分子標的薬であり、クリゾチニブとともにこれまでに無いアッセイ系の開発がブレイクスルーをもたらした。チェックポイント阻害剤ニボルマブはがんにおけるTumor - Hostの免疫制御メカニズムの本体をとらえ、モガムリズマブは当初の抗CCR4作用のみならず、Tregを抑えてHost側の抗腫瘍免疫環境を修正する働きを有し、新しい創薬分野を拓いてがんの薬物療法を根本的に変えつつある。また、がん幹細胞を特徴づける遺伝子群の発見は、がん研究が現象論から実体論、さらに本質論に迫りつつあることを示している。AMEDによる革新的医療技術創出拠点プロジェクトの下、HVJやHSV-1 G47Δといったウイルス製剤や、がん幹細胞ペプチド製剤等ワクチンが次世代治療法として現在治験中である。一方、高精度かつ高速度の測定技術・診断技術も実用化され、全ゲノムシーケンシングは日常診断に既に入り、また、マルチオミックスも現実ものとなっている。これらの研究によってがんの薬物治療は、かつての抗がん剤による確率論的なアプローチから、個人個人の腫瘍形成・進展のメカニスティックスを診断して最も適切な医薬品を選択して投与する決定論的なアプローチへのパラダイムの変換が起こっているのであり、これは臨床試験のあり方の抜本的変更を要請している。かくして、われわれ人類は新たなフェーズ:Precision Medicine時代にステップアップしつつある。すなわち、個々人においてがん自体を予防することはもはや夢ではなくなりつつある。本稿ではこのがん医学革命の現状とわが国アカデミアにおけるがん治療・研究開発基盤の構築について論ずる。

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