演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

ゲノム解析に基づくがん最適化医療実現のために

演題番号 : S4-2

[筆頭演者]
土原 一哉:1 

1:独立行政法人国立がん研究センタートランスレーショナルリサーチ分野

 

分子標的療法の進展とともに治療効果を予測するバイオマーカー診断の重要性がより高まっている。新たな治療標的や効果予測分子の同定により、肺がんや大腸がんなどいわゆる「メジャー」ながん種においても分子標的薬の対象集団は希少フラクション化しており、これによる開発コストの高騰がアカデミアや製薬企業の開発意欲を削ぎ、最適化医療実現の足かせとなるおそれもある。これを解決するために公的研究機関や企業間のコンソーシアムが検査コストを分担することでより多数の母集団のスクリーニングを可能にするnation-wide screeningの試みが各国で模索されている。大規模スクリーニングのメリットを生かすためには、生検組織など微量サンプルからより多くのバイオマーカーを同時測定する検査系も重要である。近年医療機器として承認された次世代シークエンサーが登場し、品質管理されたマルチプレックス遺伝子異常検出キットも実用化されつつある。こうした背景をもとに、本年2月より国立がん研究センターでは国内外の製薬企業との共同研究により、全国約200ヶ所の医療機関より2年間で計4500例を登録し、がん関連遺伝子異常を中央測定し、その結果を参加医療機関、企業と共有するプロジェクト、SCRUM-Japanを開始した。SCRUM-Japanは肺癌、消化器癌の全国スクリーニングLC-SCRUM-JapanおよびGI-SCREENを母体とし、米国CLIA 規準で運用可能な遺伝子検査システム(Oncomine Cancer Research Panel)で約140遺伝子の異常を検索し、各症例の臨床情報とあわせて共通のデータベースを構築する。SCRUM-Japanデータベースでは研究事務局と参加医療機関が双方向性に個々の症例のがんゲノム情報とそれに関連する治験情報を共有することを想定している。また各症例の予後情報を定期的に追跡しデータベース化することにより、研究事務局や参加企業はリアルタイムの日本人がん患者の分子疫学情報を得ることができ、治療開発への寄与が期待される。さらに被験者保護、COI に留意した余剰検体管理を行い、新たな治療開発や診断開発への応用も図る。今後さらに高度化する多層的オミクス診断への対応や、複雑化する治療選択を援助する情報工学のサポートなどを実装することがSCRUM-Japanの将来像として求められる。

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