演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

話す・聴く(理解する)能力を回復させる言語聴覚療法

演題番号 : S2-3

[筆頭演者]
安藤 牧子:1 

1:慶應義塾大学病院リハビリテーション科

 

がん患者が「話す」ことや「聴く(理解する)」ことが困難となったらどのような状況に陥るのか。病状進行や治療による身体的、精神的苦痛を思うように表出できず、また治療の経過や予定などについて十分な理解ができず、非常なストレスを抱えながらがんと向き合わなければならなくなることは想像に難くない。このようにがん患者が「話す」・「理解する」ことができなくなる時とはどのような場合なのか。
脳腫瘍では…①中枢神経障害により構音器官の運動麻痺が生じ呂律のまわりにくさを生じる構音障害、②大脳皮質の言語中枢が障害を受けることにより言語理解の低下や発話困難になり、本人が意図したものとは異なる語彙を発してしまう失語症の症状が生じる。頭頸部がんでは…①舌や下顎癌など口腔癌の治療後に構音器官の欠損や運動麻痺による構音障害、②主に喉頭癌の全摘術後の音声喪失によりコミュニケーションが困難となる。これらの症状は言語聴覚士が行う言語聴覚療法(speech-language-hearing therapy)の対象であり、症状改善を目標としたアプローチを行っている。今回は代表的なアプローチ内容について具体例を交えてご紹介する。
1.失語症訓練:症状が"見えにくい"障害であり、評価を実施し言語症状を可視化することが重要となる。その上で機能訓練を行うが、訓練と同時に代償手段を併用することも多い。ここでいう代償手段は話し言葉以外のルートで理解や表出を促すアプローチである。
2.構音訓練:中枢神経障害による構音障害は四肢の運動麻痺へのアプローチに準じ、麻痺側の運動促通を中心に訓練を行っていく。一方、口腔癌術後では器質的障害が中心となることが多いため、欠損部(再建部を含む)以外の残存部分の機能を可能な限り生かすよう、機能訓練はもちろんだが、運動(構音の仕方)の工夫を習得できるよう訓練を進めていく。
3.代用音声訓練:音声喪失後、第二の声を獲得する訓練である。①電気式人工喉頭を使用する、②食道音声を獲得する、③シャント発声を獲得するというのが近年の大きな流れとなっている。どの代用音声を獲得していくかは患者の社会的背景や希望などを踏まえて選択される。
音声言語を話し理解することは、人ならではの当然の行ないであると同時に、その機能が失われると人の尊厳に関わるとも考えられる。言語聴覚療法は、がん患者の「話す」「理解する」力をサポートするひとつの柱となっている。

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