演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

がん患者を支える理学療法

演題番号 : S2-2

[筆頭演者]
國澤 洋介:1,2 

1:埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科、2:埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション部

 

がん患者のリハビリテーションは、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などがチームを組んで、対象者の抱える問題を多角的に評価し、心身機能と身体構造・活動・参加といった国際生活機能分類(ICF:International Classification of Functioning, Disability and Health)にもとづくさまざまな側面に対し、予防的・回復的・維持的・緩和的に関与している。
がん患者の理学療法でかかわることの多い「座る・立つ・歩く」といった基本動作の障害への対応は、特殊なアプローチではないものの、がんの治療と並行して行われているという特徴を持っている。これらに影響する因子には、がんそのものによる障害や治療過程で生じる障害、さまざまな有害事象などが考えられ、理学療法場面では因子を把握した丁寧な対応が必要となる。
理学療法士は、がんの進行やがんの治療にともなう全身状態の低下、疼痛・呼吸困難感・倦怠感などの局所症状、骨転移・運動麻痺・廃用症候群など身体的側面に関連した有害事象の把握だけでなく、それらの問題が日々の動作や日常生活活動(ADL:Activities of Daily Living)にどのように影響しているかを評価し、チームとして情報共有することが求められる。
さらに、手術・化学療法・放射線治療、疼痛・呼吸困難感・嘔気など多くの身体的苦痛にさらされ、歩行困難やADLの制限、休業や役割の喪失など、多くの苦痛経験を繰り返しているがん患者の抱えるさまざまな障害には、身体的側面だけではなく心理的側面や環境的側面も大きく影響している。
このような問題を抱えているがん患者への対応では、直接相手に触れながら、約30~60分という決められた一定の時間を1対1でかかわることができ、表出される症状の動作やADLへの影響を実際に確認しながら環境的側面へも配慮することができる理学療法業務の特徴が役に立つ。理学療法士が行うストレッチやポジショニング、運動療法や運動中の会話などは、がん患者が経験する数少ない快適な刺激として受け入れられる可能性を持っており、運動や活動を媒介として本人や家族の要望を引き出すこと、ADLにつながる運動や動作を通して「自分でできる」「自分で決める」といった自律性の回復、患者と家族との関係性の再構築などにも重要な意味を持っている。

前へ戻る