演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

肝・腎機能の低下した患者のがん薬物療法

演題番号 : S1-6

[筆頭演者]
谷川原 祐介:1 

1:慶應義塾大学医学部臨床薬剤学教室

 

肝臓と腎臓は体内における薬物の不活化代謝と排泄を担う基幹臓器であるため、その機能障害は薬物動態(Pharmacokinetics)に影響する。それ故、用量と薬物曝露量(AUC)の関係が臓器機能正常者とは異なり且つ大きな個人差を生じるため、標準用量では必ずしも安全な化学療法は施行できない。有効性・安全性を検証し標準用量を設定する臨床試験(治験)は、一般に肝機能・腎機能障害者を試験対象から除外するため、そのような集団に対する至適用量は不明なまま臨床に供されている。一方、実地臨床では肝・腎機能の低下した患者にもがん治療を施行する機会があり、エビデンス情報と実地臨床のギャップを生じている。しかしながら、肝・腎機能低下患者だけを集めて第Ⅰ・Ⅱ相試験を実施して至適用量を探索するのは現実的ではない。推奨される方法は、pharmacokineticsに基づく用量設定である。
薬物は体内からの主たる消失経路に基づいて腎排泄型薬物と肝代謝型薬物に分類することができる。体内で代謝を受けず、もっぱら腎臓から未変化体として排泄される薬物(多くは水溶性化合物)を腎排泄型薬物と称し、肝臓で代謝され薬効を失う或いは肝臓へ取り込まれて胆汁排泄される薬物(多くは脂溶性化合物)を肝代謝型(或いは肝排泄型)薬物と称する。一般に、腎機能障害時は肝代謝型薬物を選択し、肝機能障害時は腎排泄型薬物を選択すれば、用量調節することなく標準用量で治療を行える。薬剤の選択肢が多い疾患領域はそのように対応できるが、抗がん薬は選択肢が少ないため、治療上腎排泄型薬物を腎機能低下患者に投与するケースがありうる。その際は腎機能に応じて用量を調節する必要がある。腎機能の指標として繁用されるのがGFR、クレアチニン・クリアランスであり、用量調節の基準とするpharmacokineticパラメータはAUCである。すなわち、臓器機能正常者試験で有効性・安全性が証明された薬物曝露量(AUC)と同等のAUCになるように腎機能低下者の用量を減量調節するのであり、この考え方は一般に exposure matchingと呼ばれている。
本講演では、腎機能低下患者に対するカルボプラチン、S-1、カペシタビンの用量調節法、肝機能低下患者に対するドキソルビシン、エピルビシン、ビノレルビン、パクリタキセル等の用量調節指針について紹介する。

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