演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

糖尿病合併造血器腫瘍患者に対するがん化学療法時の留意点

演題番号 : S1-4

[筆頭演者]
土手 賢史:1 
[共同演者]
小林 由佳:1

1:社会福祉法人京都社会事業財団京都桂病院薬剤科

 

糖尿病薬物治療のアウトカムは生存期間延長、大血管障害 (心臓病、脳卒中等) 予防と細小血管障害 (網膜症、腎症、神経障害等) 予防である。しかし、長期予後が期待できない悪性疾患ではこれらアウトカムを目標にして薬物治療を適用することは困難な場合がある。近年のがん薬物療法において多数の分子標的治療薬が上市され、支持療法の進歩も目覚ましいが、有害事象に高血糖を発現する薬剤が存在する。具体的には、ステロイド、オランザピン、mTOR阻害剤が挙げられる。特にステロイドは投与される頻度が多く、糖尿病既往のない患者への繰り返し投与により糖尿病が顕在化することは珍しい事ではない。
造血器腫瘍のなかでもリンパ系腫瘍や多発性骨髄腫に対してステロイドは抗腫瘍剤として大量投与され、糖尿病患者にとってステロイド高血糖が問題となる。がん化学療法中の高血糖は生存期間の短縮や敗血症を含めた感染症の発現率増加につながる可能性があり、高血糖の是正にインスリンを要することが多い。インスリン投与法の1つであるスライディング・スケール法では、ステロイド高血糖の是正に繋がらず糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧性高血糖症候群合併のリスクも懸念されるため、責任インスリン投与量を調節するアルゴリズム法で管理を行うことが勧められている。ただし、糖尿病合併がん患者の血糖管理目標については統一された見解はなく、強化インスリン療法による厳格血糖管理の予後改善効果も示されていない。ステロイド高血糖に適切に対応するためには、1) 投与するステロイドの作用持続時間、2) 血糖降下薬の特徴、を念頭に置いた個別対応が必要である。プレドニゾロンについて、午前中に投与した場合は午後の食後高血糖が顕著となるが、血糖上昇作用持続時間は短く翌朝の空腹時血糖は高値とならない (反応性低血糖を来たすこともある) ため、作用持続時間の長い血糖降下薬を使用すると夜間~早朝にかけての低血糖リスクが高くなる。一方、デキサメタゾンは作用持続時間が長く空腹時高血糖を来たすため、高血糖の是正には基礎インスリン投与が必要となる。
本シンポジウムでは、糖尿病合併がん患者の診療に関する最新の知見や血糖管理時の留意点を提示するとともに、当院での糖尿病合併造血器腫瘍患者における血糖管理プロトコルについて紹介する。

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