演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

間質性肺炎/肺線維症を合併する患者のがん薬物療法

演題番号 : S1-3

[筆頭演者]
加藤 晃史:1 

1:地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立循環器呼吸器病センター肺がん包括診療センター

 

間質性肺炎は、進行すると拘束性換気障害をきたし呼吸不全を伴う慢性呼吸器疾患である。病因あるいは病理診断によりいくつかのサブタイプに分かれるが、最も多いのが肺線維症(通常型間質性肺炎)である。近年、線維化抑制を有するピルフェニドンとニンテダニブが経年的な拘束性障害の進行を遅延させることが証明されわが国でも承認された。肺線維症の経過中には突然急激な病勢の進行により呼吸不全をきたす、急性増悪と呼ばれる病態悪化が起こることがあり、自然経過での頻度は1年あたり5-10%である。抗線維化剤には抗炎症作用もあり、急性増悪の抑制効果も期待されている。
喫煙リスクが共通し肺線維症と肺がんは合併しやすい。肺線維症患者はその経過中に10-30%で肺がんを合併、一方進行肺がんでは、診断時に5-10%程度で間質性肺炎を有する。手術や放射線、化学療法のいずれも急性増悪の誘因となるため、治療方針決定時に肺線維症の有無は重要な因子となるが、予後が不良であり通常の臨床試験には組み入れられずエビデンスに乏しい。
もっとも解析が進んでいるのは肺がんである。間質性肺炎合併非小細胞肺がん患者に対する化学療法の奏効率は30%、無増悪生存期間は4ヶ月と非合併患者と同様であるが、治療中の急性増悪リスクは10-20%、その半数が致死的である。二次治療への移行率は非合併患者より低いが、二次治療以後も急性増悪が起こり、全生涯での急性増悪リスクは30%、全生存期間は10ヶ月である。これは非合併患者での12ヶ月よりも短い。自然経過に比べて急性増悪率が高いのはがんの合併自体、あるいは治療介入が急性増悪のリスクを挙げている可能性が考えられる。
ベネフィットとリスクを総合的に考えると、間質性肺炎合併肺がん患者に対する化学療法は短期的な効果は期待できるが、生存期間延長に寄与するかどうかは疑問である。しかし治療無し群との比較試験は実施困難であり、現在までに得られた情報をもとに治療方法につき十分な話し合いがなされるべきである。
肺がん以外のがん腫においても、間質性病変の存在が化学療法後の薬剤性間質性肺炎のリスク因子となる報告がある。上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤やm-TOR阻害剤、抗PD-1抗体など肺毒性を有する薬物治療を行う前には、肺障害のリスク因子であるCT画像による間質性病変のスクリーニング評価が重要である。

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