演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

高齢患者に対するがん薬物療法

演題番号 : S1-1

[筆頭演者]
横出 正之:1 

1:京都大学医学部附属病院臨床研究総合センター

 

わが国の主な死因の年次推移をみると、がんは1981年に第1位となったが、その後も上昇を続け平成23年の全死亡者に占める割合は28.5%と、全死亡者のおよそ3.5人に1人ががんで死亡している。しかし年齢構成の変化の影響を取り除いた年齢調整死亡率をみると、男性は1980年代後半までは増加していたが、1990年代後半からは減少傾向にあり、女性も減少傾向が続いている。このことは、わが国におけるがん死亡率の増加には、人口構成の変化、すなわち社会の高齢化が大きく関わっていると考えられる。がんの多くは40歳代から発症が増え始め、加齢にともない急激に罹患率・死亡率が増加することから、今後団塊の世代が高齢化するにつれ、高齢がん患者は今後一層増加すると考えられる。
一般に高齢患者の特徴として多様性を有することが挙げられる。すなわち臓器機能の低下、併存疾患など若年者ではみられない多彩な病態が生じるほか、薬剤による副作用などの頻度も高いことが知られる。さらに抑うつ感、認知機能などの精神神経学的問題や経済的状況、家族との関係など社会的要因も考慮する必要がある。高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment;CGA)はこのような高齢患者に対して多職種からなるチームで包括的評価をおこない治療方針を立案するもので、高齢がん患者診療においても、包括的な評価にもとづき、がん治療の副作用の予測、治療法ならびに治療強度の選択をすることが求められる。加齢とともに平均余命は短くなるが、個々の高齢患者の治療方針の選択にあたっては、がん死までの予測生存期間に加えて、患者の日常生活動作(Activities of daily living;ADL)や生活の質(QOL)を重視したCureとCareの両面からの全人的な医療が必要となると考えられる。
本講では上述した問題を含めて、老年医学の視点からみた高齢がん患者に対する薬物治療のありかたにつき述べたい。

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