演題抄録

一般演題 (示説)

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

実測による1個のマウス癌幹細胞の宿主における増殖動態について

演題番号 : P51-1

[筆頭演者]
藤本 二郎:1 
[共同演者]
辻 嘉文:2

1:兵庫県健康財団、2:つぢ肛門科

 

癌の難治性は癌幹細胞(TSC)に起因するとされているが、TSCの宿主における増殖動態を観察できる実験系の確立はこの問題へのアプローチに寄与するものと考えられた。前回の本学会では1個のマウスTSCを同系マウスに移植し、移植に成功した2例からTSCの増殖曲線はGompertz曲線に近似することを推測した。今回は21例の移植成功例について経時的に細胞数を測定し作成した増殖曲線について報告する。
実験に用いた腫瘍はFujimoto ascites tumor(FAT)で同系のC3H/Heマウスで継代維持されている。FAT 細胞にHoechst33342とpropidium iodideの二重染色を行い蛍光顕微鏡で観察して、いずれの蛍光をも発しないものをTSCに富むside population(SP)細胞とし、前者に染色されるが後者に染色されないものをnon SP細胞とした。マイクロマニュピュレーターを用いてSP細胞のみを選別し1個を雌同系マウスにip移植した時の生着率は21/47で、生存日数は27日であった。一方1個のnon SP細胞をip移植したときの生着率は2/17であった。
1個のSP細胞を移植した47匹のマウスは1-3匹ずつ経時的に腹腔内総腫瘍細胞数を測定した。移植後7日目までは腹腔内腫瘍細胞は確認しえなかったが、8日目以降27日目まで21匹について腹腔内腫瘍細胞数を計測できた。8日目と27日目の平均細胞数は夫々7.88×105、3.31×108で、他の測定値はこの範囲内であった。これらの細胞数の推移の回帰分析によりK=8.4423、a=0.6984及びb=0.7474を算出した。y を腹腔内総腫瘍細胞数、t を移植後の日数としたときのGompertz曲線(G曲線)はy=Ka∧b∧x (但し∧はべき乗、x=t-9)に挿入してy(対数)=8.4423×0.6984∧0.7474∧(t-9)となった。このG曲線のt=0からt=7の部分は計算値であるがt=0のときy=1.15(実数)となり、実際に移植したSP細胞の個数の1に近似していた。G曲線のt=5でy=470(実数)のところに変曲点があり、これはTSCの主たる分裂様式が非対称分裂から対称分裂に移行することを示唆するものと考えられた。さらにG曲線はt=16でy=1.14×108のところでplateauに到達した。
56匹の雌同系マウスに1匹あたり100万個のFAT細胞をip移植し、移植1日目より14日目まで毎日3-6匹ずつ腹腔内総腫瘍細胞数を測定し増殖曲線を作成した。G曲線ではt=9のときy=78万7千で移植したFAT細胞数の100万に近い数値であるが、この増殖曲線はG曲線のt=9(FAT 100万個移植当日に相当)からt=23(100万個移植14日目に相当)までの部分と極めて近似していた。

キーワード

臓器別:その他

手法別:基礎腫瘍学

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