演題抄録

一般演題 (示説)

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

薬剤性肺障害の発症が診断の契機となったHER2陽性乳癌肺転移・癌性リンパ管症の1例

演題番号 : P28-9

[筆頭演者]
新宮 聖士:1 
[共同演者]
小松 哲:1、佐々木 康綱:2

1:飯田市立病院外科、2:昭和大学医学部腫瘍内科

 

ゲフィチニブによる急性肺障害(間質性肺炎)が数多く報告され、薬剤性肺障害が社会的にも注目されるようになった。抗腫瘍薬による間質性肺炎は、致死的になり得る病態であるため、迅速かつ適切な対応が求められる。トラスツズマブ(以下、Tmab)の副作用としては、初回投与時のinfusion reactionが有名であるが、間質性肺炎などの肺障害も報告されている。今回われわれは、術前化学療法(以下、NAC)によりpathological CR(以下、pCR)が得られたHER2陽性乳癌術後補助療法としてTmab投与中に、Tmabの関与が疑われる間質性肺炎をきたし、それを契機に肺転移・癌性リンパ管症も発見された症例を経験したので報告する。【症例】患者は57歳、女性。左乳癌(luminal-HER2)、T3N2M0、Stage IIIAにて、NAC後手術施行(効果判定:pCR)。術後Tmab投与中に、呼吸苦、咳嗽が出現し、胸部CTにて両側肺野にすりガラス影、浸潤影を認め、間質性肺炎と診断された。血液検査ではKL-6の上昇と伴に、腫瘍マーカーの上昇も認め、肺転移・癌性リンパ管症の存在も疑われた。Tmab休薬、ステロイド投与により画像所見改善するも、呼吸苦の改善は一過性であり、ラパチニブ+カペシタビン投与により症状軽快した。【考察】Tmabによる薬剤性肺障害の発現率は、間質性肺炎 0.44%、ARDS 0.09%との報告があり、多くはない。薬剤投与から肺障害発症までの時期は様々であるが、投与後2~3週間から、2~3ヵ月で発症するものが多い。本例は、潜在性に肺転移・癌性リンパ管症があり、Tmabによる間質性肺炎が発症したと考えられた。その理由は以下の通りである。①Tmab補助療法中に血清HER2値は正常範囲内であるが上昇傾向にあった。②Tmab投与中止、ステロイドパルス療法により、胸部X線、CT所見は著明に改善したが、腫瘍マーカー、血清KL-6値は上昇し続けた。すなわち、間質性肺炎は軽快したが、癌は進行したことを示唆している。③一旦は改善した呼吸苦、咳嗽などの自覚症状は、Tmab休薬期間が長くなると次第に悪化し、入院、酸素吸入を必要とするほどになったが、ラパチニブ、カペシタビン投与により短期間で軽快した。本例は、潜在性肺転移・癌性リンパ管症の下に、Tmabによる間質性肺炎が発症したと考えられた。NACにてpCRが得られ、Tmab初回投与からほぼ1年経過していたことから、再発および薬剤性肺障害を想定できず、肺病変の早期発見に至らなかった。

キーワード

臓器別:乳腺

手法別:分子標的治療

前へ戻る