演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

縮小手術時代の肺マッピングとナビゲーション:過不足のない肺切除を目指して

演題番号 : OS4-3

[筆頭演者]
佐藤 雅昭:1 

1:東京大学医学部附属病院呼吸器外科

 

肺癌手術の標準術式は肺葉切除だが、早期肺癌に対する縮小手術(肺部分切除・区域切除)の有効性は国内外の複数の臨床研究によって示されている。CT検診の導入等により、こうした縮小手術の必要性は今後高まると予想される。また肺癌治療の進歩により一人の患者が多発肺癌に対して複数回の手術を受けることも稀ではなく、高齢低肺機能患者も増加している。このように縮小手術が必要となる局面は多々ある。しかし、解剖学的に明らかな肺葉を切除するのと違い、縮小手術はその患者のその病変に対してどこまで取るか、oncologicalな満足度と肺機能温存のバランスが手術プランと方法に大きく依存する。
われわれが2012年に京都大学で開発したvirtual assisted lung mapping (VAL-MAP)法は、高解像度CT画像を基に3次元再構成したバーチャル気管支鏡、3D画像をガイドにして、術前気管支鏡下に複数(3-7箇所程度)のマーキングを肺表面に行い、これをナビゲーションとして精密な低侵襲胸腔鏡下肺切除術を可能とするものである。この方法が特に有効なのは、胸腔鏡手術では触診困難な小病変やCTですりガラス様陰影を呈し、切除マージンを確実にする必要がある病変である。部分切除においては、切除マージンを考慮した2-4か所程度のマーキングで腫瘍を取り囲み、区域切除では、十分なマージンが確保できるよう、切除区域および隣接区域から3-7か所程度のマーキングで切離線を設定する。区域切除では特に、解剖学的な区域切除では十分なマージンが確保できない場合の拡大区域切除や亜区域を組み合わせることで過不足ない切除を可能とする複雑区域切除で最も力を発揮する。放射線科が使用するワークステーション、透視可能な内視鏡室があればどの施設でも実施可能であり、特別な設備を必要としないのも特徴である。
VAL-MAPは、触知困難病変に対する従来のマーキング法を超えて、胸腔鏡下肺部分切除、区域切除に幅広く適応可能である。2015年4月現在、VAL-MAPを用いた手術の有効性、再現性を検証するmulti-institutional lung mapping study (MIL-MAP) Studyが日本国内の20近い施設で進行し、300件以上が安全に施行され良好な成績を得ている。合併症は治療不要な気胸が4%程度で認められるほかは非常にまれで、切除成功率は99%以上であった。VAL-MAPをさらに効率化するプログラムの開発も進んでおり、個別化肺癌外科治療の一翼を担うべく、今後さらなる発展が期待される。

前へ戻る