演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

食道癌個別化治療へ向けた新たなリンパ節転移リスク診断 -CRP遺伝子多型診断-

演題番号 : OS2-2

[筆頭演者]
佐々木 智彦:1 
[共同演者]
本山 悟:1、佐藤 雄亮:1、吉野 敬:1、脇田 晃行:1、劉 嘉嘉:1、工藤 智史:1、南谷 佳弘:1

1:秋田大学医学部食道外科

 

リンパ節転移は食道癌患者の治療方針・予後を左右する重要な因子だが、その診断能は十分ではない。特にMM-T1b症例では正確なリンパ節転移陰性診断ができれば、高侵襲な外科的切除を回避し侵襲の少ない内視鏡的粘膜切除の適応を拡大することが可能となる。当教室では食道癌患者における血清C反応性タンパク(CRP)産生量を支配するCRP1846C>T遺伝子多型(rs1205)とリンパ節転移との関連を報告してきた。今回、CRP遺伝子多型を用いたリンパ節転移リスク診断の有用性と臨床応用への可能性を提示する。
当院で根治手術が施行されたpT1b食道癌74例の患者DNAを精製、患者CRP遺伝子多型を解析し組織学的リンパ節転移との関連を検討すると両者に有意な相関を認めた(P=0.0223)。CRP産生能が低いT/T型の患者はCRP産生能が保たれたC/C、C/T型の患者と比べ3倍以上のリスクでリンパ節転移を伴った。この現象は肺癌、乳癌、子宮体癌でも同様に認められ既に報告している。またCTを中心とした現在の臨床診断にCRP遺伝子多型リスク診断を付加した場合、Negative predictive value(NPV)は84%となりリンパ節転移陰性例をより高い精度で診断し得た。多施設共同研究で根治手術が施行されたpT1b食道癌121例の解析では、臨床診断にCRP遺伝子多型リスク診断を付加するとNPVは80%となり、pSM1の16例では94%と上昇し、縮小治療(ESD)を選択するための新たな診断方法になり得る可能性を示した。
リンパ節転移の起こりやすいT/T型では恒常的にCRP産生低下を認める。この事象をもとにCRPがリンパ節転移を抑制すると仮説を立て基礎研究で証明した。①扁平上皮癌細胞移植マウスのCRP投与群とコントロール群でリンパ節転移状況を検証すると、コントロール群70%に対しCRP群では30%まで抑制され、腫瘍内リンパ管新生が減少した(P=0.0488)。②腫瘍関連マクロファージのうちM2マクロファージは癌の転移、腫瘍内血管新生を促進すると報告されているが、CRP群で腫瘍内M2マクロファージの割合が減少(P=0.0091)、腫瘍内血管数は減少した(P=0.0028)。③CRPを加えた癌細胞の遊走能は阻害され、EMTに関与するE-cadherin発現増強、N-cadherin発現低下を認めた。これらはCRPのリンパ節転移抑制作用を示唆し、CRP遺伝子多型リスク診断の有用性を裏付けている。
従来の臨症診断にCRP遺伝子多型リスク診断を加えることによりT1b食道癌のリンパ節転移診断が高精度で行え、個別化治療へ寄与するものと考える。

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