演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

骨・軟部腫瘍に対する分子標的療法の導入と現状について

演題番号 : OS18-1

[筆頭演者]
森岡 秀夫:1 

1:慶應義塾大学医学部整形外科

 

悪性骨・軟部腫瘍の治療は、この30年間に飛躍的進歩を遂げた。1970年代後半から導入された化学療法やイメージング技術の進歩により、多くの例で切・離断術ではなく、患肢温存手術が行われるようになった。また、最近10年間で日本臨床腫瘍研究グループにより悪性骨・軟部腫瘍に対する薬物治療に関する前向き臨床試験が相次いで行われ、既存の薬剤を用いた標準治療の整備が進んでいる。またこの間、骨・軟部腫瘍領域では、分子生物学的研究などの基礎研究が盛んに行われたが、いわゆるトランスレーショナルな創薬研究は、希少がんであるがゆえに進まなかった。したがって、使用できる薬剤には現在でも限りがあり、薬物治療に関してはやや頭打ちの状態といえる。しかし、昨今、国を挙げて希少がんへの取り組みが始まり、製薬業界もこの分野に注目している。骨・軟部腫瘍の領域でも保険適応を得た新規治療薬が出現し、新しい流れが起きている。その中で、悪性軟部腫瘍に対する新規血管新生阻害薬であるパゾパニブと骨巨細胞腫に対する抗RANKL抗体の導入が、臨床的に大きな変化をもたらしたといえる。悪性軟部腫瘍は、いわゆる希少がんに分類され、発生頻度は人口10万人あたり2人程度で、成人の全悪性腫瘍の約1%を占めるに過ぎない。遠隔転移例など進行した場合は、既存の薬剤による治療成績は満足できるレベルには達していない。パゾパニブは、VEGFRを標的とする低分子化合物であり、VEGF-1,-2,-3、PDGFRおよびc-kitの作用を阻害する多分子標的チロシンキナーゼ阻害剤であり、骨・軟部腫瘍領域の分子標的薬の象徴的存在である。一方、骨巨細胞腫は破骨細胞様多核巨細胞を伴う骨腫瘍であり、2013年のWHO分類ではIntermediateに分類され、局所再発を生じ、まれに肺転移も来す。本腫瘍は多核巨細胞と間質の単核紡錘形細胞からなり、多核巨細胞にはRANKが、紡錘形細胞にはRANKLが発現しており、RANK-RANKLシグナルが病態形成に深く関与している。デノスマブは、RANKLを標的とするヒト型モノクローナル抗体製剤である。デノスマブによりRANKLが阻害されることにより、破骨細胞様多核巨細胞が消失し、腫瘍による骨破壊が抑制される。また、腫瘍内に骨形成が起こり、疼痛などの自覚症状も改善する。本項では、骨・軟部腫瘍領域に導入されたこれらの分子標的治療薬の作用メカニズムとその効果、問題点を中心に述べる。

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