演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

遺伝子多型解析とヘリコバクターピロリ除菌の個別化

演題番号 : OS17-3

[筆頭演者]
古田 隆久:1 

1:浜松医科大学医学部附属病院臨床研究管理センター

 

H. pylori(以下HP)の除菌が内視鏡的な切除後の胃癌のリスクを低下させるとともに胃癌の予防に繋がる可能性を示唆する報告がなされ、HPの除菌は胃癌の一次、二次予防として重要な対胃癌戦略の一つとなってきている。
本邦でのHPの除菌は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)等の胃酸分泌抑制薬と2種類の抗菌薬(アモキシシリン(AMPC)とクラリスロマイシン(CAM)(一次除菌)もしくはメトロニダゾール(MNZ)(二次除菌))で行われる。HP除菌における胃酸分泌抑制薬の役割は、胃内環境を中性域に近づけてHPの抗菌薬への感受性を高めるとともに、胃内での抗菌薬の安定性を保つことである。従って、胃酸分泌抑制の成否はHPの除菌の成否に影響する。
しかし、PPIの代謝酵素のCYP2C19の活性には遺伝的多型性があり、PPIの血中濃度、そして、胃酸分泌抑制効果に影響し、PPI/AMPC/CAM療法において、CYP2C19のrapid metabolizer(*1/*1)では除菌率が低下する。そのため、PPIの増量が必要である。
除菌の成否には、HPの抗菌薬耐性も関わる。特に一次除菌で用いられるCAMに対する耐性率は最近では30%を越えており、一次除菌率の低下の大きな原因である。HPのCAM耐性も遺伝子検査で判明する。
以上の問題から、浜松医科大学では、CYP2C19遺伝子多型とHPのCAM耐性変異に基づく個別化された除菌療法を行っている。内視鏡検査下で採取した胃液や胃粘膜生検組織より、CYP2C19遺伝子多型とHPのCAM耐性変異を迅速SNP解析機にて測定し、検査当日に遺伝子多型に基づく除菌薬の処方をしている。即ち、CYP2C19がrapid metabolizerでは、PPIは常用量の4回投与を行い、HPがCAM感受性であればAMPCとCAMを用いるが、CAM耐性であれば一次除菌でもMNZを使用している。また、AMPCは時間依存性の抗生物質であることから、500 mgの3-4回投与を基本としている。除菌率は一次除菌で98.0%(245/250)、二次除菌で94.6%(88/93)と良好であり、同様のコンセプトで行う三次除菌も87.9%(160/182)と良好な除菌成績をあげている。
2015年2月より胃酸分泌抑制薬としてVonoprazanが使用可能となった。従来のPPIと比較して、胃酸分泌抑制効果が強く、個体間格差少なく、従って、PPIのCYP2C19遺伝子多型に基づく効果の個体間格差の問題は、この薬物の登場によって解決されていく可能性が考えられる。今後は、抗菌薬の耐性に基づく個別化がより重要となっていくと予想される。

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