演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

胃がんの包括的ゲノム解析とPrecision Medicine

演題番号 : OS17-1

[筆頭演者]
石川 俊平:1 

1:東京医科歯科大学難治疾患研究所ゲノム病理学

 

胃癌は生物学的にも臨床病理学的にも多様性に富む疾患であり、特にびまん型胃癌(Diffuse-type Gastric Carcinoma)は難治性でありこれまで有効な分子標的が見つかっていない。びまん型胃癌に特徴的ながんゲノムプロファイルを解明し治療標的を探索する目的でびまん型胃癌組織の全エクソームシークエンスを行った。腸型胃癌には認められない塩基置換のパターン(変異シグネチャー)が認められ、びまん型胃癌に特異的な内的・外的環境要因を反映していると考えられた。遺伝子レベルの解析ではびまん型胃癌に特異的に約1/4の症例でRHOA遺伝子変異を認め、アミノ酸置換部位がホットスポットを形成しているため機能獲得性変異である可能性が示唆される。特にY42Cはcore effector regionと呼ばれエフェクター分子等他のタンパクとの相互作用に重要な部分に含まれていた。実験的な検証によって変異型RHOAがドライバー遺伝子として働くことが考えられた。RHOA変異を持つ胃癌の大部分はBorrmann3型の肉眼形態をとり、典型的なびまん型胃癌としての組織像に加えて粘膜部に分化した成分を伴っている。ダイセクションを行って解析することにより粘膜分化部にも変異が入っていることがわかり、胃癌の発生の比較的初期から変異が入っていることが示唆された。
また世界中の複数のグループによる胃癌の包括的ゲノム解析により胃癌のなかにおけるdistinct entityが明らかにされ、びまん型胃癌は腸型のようにキナーゼ群によってドライブされる胃癌とは少し異なることがわかってきた。RHOA変異型胃癌はHER2陽性の割合が極めて低く、既存の分子標的治療薬の適応になりにくい群である。難治性で有効な治療法がないびまん型胃癌にとって変異型RHOAは新規治療標的分子候補となるとともに、胃癌の分子病理学的分類における重要な指標となると考えられる。

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