演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

卵巣明細胞腺癌に対するmTOR阻害治療:開発の現状と課題

演題番号 : OS10-6

[筆頭演者]
馬淵 誠士:1 

1:大阪大学産婦人科

 

卵巣明細胞腺癌は、本邦では漿液性腺癌に次いで高頻度に観察される組織型であるが、Key drugであるプラチナ併用化学療法に抵抗性を示すため、極めて予後不良である。予後を改善するためには、基軸となる抗癌剤の開発に加え、卵巣明細胞腺癌の遺伝的背景に基づいた分子標的治療の開発が必要である。
卵巣明細胞腺癌に特異的かつ高頻度に認められる遺伝子異常は、BAF250a蛋白をコードするARID1Aの変異と、PI3KをコードするPIK3CAの変異である。2015年に入り、ARID1A変異とPIK3CA変異を同時に有し、ヒト卵巣明細胞腺癌に酷似した卵巣癌を発生するマウスモデルが開発された。この研究成果は、卵巣明細胞腺癌の発癌・進展過程が、ARID1APIK3CAの変異によってもたらされるSignaling eventsに依存していることを示しており、これをいかに阻害するかが、卵巣明細胞腺癌治療の重要な課題である。PI3Kの下流に存在するmTOR complexesは、細胞増殖・浸潤・脈管新生に関与する多機能分子である。これまでの研究により、卵巣明細胞腺癌において、mTOR complex 1(mTORC1)およびmTORC2が高頻度に活性化していることが報告され、mTOR complexesは卵巣明細胞腺癌の治療標的として注目されている。
Trabectedinは海洋生物であるホヤの一種から精製されたDNA結合型の殺細胞性抗癌剤である。Trabectedinが抗腫瘍効果を発揮するには、標的となる癌細胞が、ヌクレオチド除去修復機構(NER)を発現している必要がある。またTrabectedinは、細胞周期がG1期の細胞に対して最も強い抗腫瘍効果を示すという、ユニークな特徴を有する。これまでの基礎研究によると、卵巣明細胞腺癌はNERを高発現しており、G1期の細胞の比率が比較的高いことから、Trabectedinが卵巣明細胞腺癌に有効性を示す可能性があると考えられる。
我々は、mTOR阻害治療およびTrabectedin(およびその誘導体Lubinectedin)が、卵巣明細胞腺癌に対する有効な治療になりうると考え、その臨床応用を目指した研究を行ってきた。本シンポジウムでは、これまでの研究の成果を発表すると共に、臨床応用に向けた取り組みについても紹介したい。

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