演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

卵巣明細胞腺癌におけるゲノムコピー数・遺伝子発現解析による分子生物学的機構の解明

演題番号 : OS10-5

[筆頭演者]
矢内原 臨:1 
[共同演者]
岡本 愛光:1

1:東京慈恵会医科大学産婦人科学講座

 

卵巣明細胞腺癌の生物学的特徴(日本人に高頻度、子宮内膜症合併、血栓症合併)に関与する分子機構の解明は、他の組織型に比べ進行例で予後不良なこの卵巣癌組織亜型の発生及び進展機序を明らかにする可能性がある。卵巣明細胞腺癌144症例(日本人120例、韓国人15例、ドイツ人9例)を対象としたゲノムコピー数解析では8q、17q、20qの染色体増幅と9q、13qの染色体欠失が高頻度であった。興味深いことに8q全域と20q13.2 (ZNF217領域)の増幅は、日本人において他人種に比し有意に高頻度であった。一方、子宮内膜症合併は、EFGR遺伝子領域の増幅と有意な相関関係を認めた。ゲノム解析により得られたZNF217遺伝子とEGFR遺伝子におけるコピー数異常と臨床病態との関連は、各々のmRNA発現解析においても確認され、これらの遺伝子群をターゲットとした創薬アプローチは、卵巣明細胞腺癌症例のprecision medicineに寄与する可能性がある。
近年、腫瘍局所免疫が癌の発生及び進展に関わることが着目されている。卵巣明細胞腺癌を対象とした免疫関連遺伝子の網羅的発現解析では、炎症性サイトカインであるIL-6が高発現であった。またIL-6/IL-6R-Stat3シグナルの重要な開始起点であるIL-6受容体 (IL-6R)も、卵巣明細胞腺癌において高頻度に発現しており、その高発現症例は予後不良であることが明らかとなった。そこで、抗IL-6受容体モノクローナル抗体(トシリツマブ)を用いてIL-6/IL-6R-Stat3シグナル抑制効果を検討したところ、細胞浸潤能の低下と抗癌剤の感受性が亢進することが確認された。以上の結果は、 IL-6/IL-6R-Stat3シグナルが卵巣明細胞腺癌において高度に活性化されており、細胞の悪性化にかかわる重要な役割を担っていることを示している。一方、IL-6/IL-6R-Stat3シグナルは卵巣明細胞腺癌に対する有力な分子標的治療のターゲットであると考えられ、抗IL-6受容体モノクローナル抗体(トシリツマブ)と抗癌剤併用による新規治療法の可能性につき、現在さらなる検討を行っている。

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