演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

卵巣癌の微小免疫環境解析と抗PD-1抗体療法の展望

演題番号 : OS10-4

[筆頭演者]
濱西 潤三:1 
[共同演者]
万代 昌紀:2、松村 謙臣:1、安彦 郁:1、村上 隆介:1、馬場 長:1、山口 建:1、小西 郁生:1

1:京都大学大学院医学研究科 婦人科学産科学、2:近畿大学医学部 産科婦人科学教室

 

 近年、分子生物学の発展に伴い「がん免疫逃避機構」の存在が示され、この機構を克服する新たな治療開発が進んでいる。その中で免疫抑制性補助シグナル受容体PD-1(Programmed cell death-1)とそのリガンド(PD-L1)との経路(いわゆる免疫チェックポイント)が注目されている。これまでに我々は、臨床検体を用いて卵巣癌の腫瘍局所の免疫状態の解析を行い、腫瘍内CD8+T細胞の浸潤が少なく、腫瘍細胞のPD-L1発現が高いほど生存期間が有意に短いことを示した。すなわち卵巣癌の腫瘍局所の免疫状態が患者予後に影響を及ぼす可能性があり、その中でもPD-1経路は重要な因子の一つであると考え、同経路を阻害する抗体薬を用いた医師主導治験を行った。
 2011年よりプラチナ抵抗性再発卵巣癌20例を対象とし、完全ヒト型抗PD-1抗体(ニボルマブ)を用いて、2用量コホート(1mg/kg, 3mg/kg, 各10例)にて最大1年間の治療期間を設定した第II相試験を行った結果、完全奏効(CR)2例を含む奏効率15%、疾患制御率45%を示す治療効果を認めさらに、CRの2例はともに1年間のニボルマブの治験薬投与が終了し、その後も無治療であるが無再発生存を続けており、長期の治療効果を認めた。なお生存解析では、PFSは3.5か月であったが、OSは20.0ヶ月とプラチナ抵抗性卵巣癌に対する治療としては良好な結果であった。
 本治験結果により、1)さらに拡大した治験にて、早期に卵巣癌に対する抗PD-1抗体の適応拡大を目指すこと、2)抗PD-1抗体薬の有効例や副作用、あるいは治療を早期に終了可能とするようなバイオマーカーを探索すること、3)他の抗がん薬とPD-1経路阻害薬との併用療法による効果増強を目指すこと、が肝要であることがわかった。そこで、現在再発卵巣癌に対するさらに拡大した治験を企業に協力しながら進めている。さらに前述の医師治験で得られた臨床検体を用いて、治療効果を認めた患者に特徴的な発現パターンを示す因子を抽出しており、さらにマウス卵巣癌モデルを用いて、化学療法とPD-1経路阻害薬(抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体)との併用療法を行った結果、いずれも併用による上乗せ効果を認めたことから、PD-1経路阻害薬を用いたChemo-Immunotherapyは有用である可能性が示唆された。

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