演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

癌性腹膜炎に対するHB-EGF標的薬BK-UMの創薬開発

演題番号 : OS10-3

[筆頭演者]
宮本 新吾:1 

1:福岡大学医学部産婦人科学教室

 

卵巣癌・卵管癌・腹膜癌は、進行癌として診断されることの多い致死性の極めて高い悪性腫瘍です。これらの悪性腫瘍の治療は、手術療法とプラチナ系製剤とタキサン系製剤による化学療法が標準治療です。しかし、ほとんどの症例は再発し有効な治療法がないため新しい治療薬の開発が切望されています。
申請者らは、上皮系増殖因子であるHB-EGFが卵巣癌・胃癌・乳癌などで高発現し、癌細胞の増殖・進展に重要な役割をしていることを明らかにしてきました。また、申請者らは、HB-EGF特異的抑制剤CRM197が癌細胞の増殖活性を抑制することを明らかにしてきました。平成16年度から文科省がんトランスレーショナル事業の助成を受け、CRM197を主成分とする癌治療薬(BK-UM)として創薬開発を開始しました。BK-UMのGMP製造、ハムスターとカニクイサルを用いたGLP毒性試験、マウス癌モデルでの薬効試験、薬物代謝試験等を経て、平成19年12月より「治癒不能な進行・再発卵巣癌を対象としたHB-EGF特異的抑制剤BK-UMの第I相臨床試験」を開始し、医師主導治験として11例に実施しました。推奨用量は、2mg/m2でした。有害事象として発熱と腹膜刺激症状を認めましたが、開発に障害となる有害事象は全く認められず、安全性は検証されました。また、BK-UM投与により①腹水中及び血中HB-EGF値の低下②腹膜播種の改善③転移リンパ節の縮小を含めた抗腫瘍効果④抗癌剤への感受性の回復、などの有効性が期待されました。PMDAとの薬事戦略相談、対面助言を経て、再発卵巣癌を対象にしたBK-UMとゲムシタビンの併用治療の第Ⅱ相試験(医師主導治験)を平成25年6月より開始し、安全性の確認を終了しています。有害事象として第I相試験と同様に、発熱と腹膜刺激症状を認めましたが、開発に障害となる有害事象は全く認められず、安全性は検証されました。また、GEM群8例に比較しBK-UM+GEM群7例において①血中HB-EGF値の低下②腹膜播種の改善③転移リンパ節の縮小を含めた抗腫瘍効果④抗癌剤への感受性の回復、の有効性が期待されました。これらの成果から、BK-UMは安全性が高く、腔水症の管理を含めた癌性腹膜炎の治療に有効な治療薬であることが示唆されています。平成27年3月末で、橋渡し研究からの助成が途絶えたことで、現在治験を中断しています。

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