演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

分子標的薬と新規免疫療法の個別化医療に向けて

演題番号 : OS1-5

[筆頭演者]
小原 航:1 
[共同演者]
加藤 廉平:1、加藤 陽一郎:1、兼平 貢:1、岩崎 一洋:1、高田 亮:1

1:岩手医科大学医学部泌尿器科

 

近年、様々なオミックスアプローチによる解析手法が進歩しており、ゲノムワイドな遺伝子やタンパク質の量的・質的レベルの変化に基づき、がんが発生するメカニズムの全体像をより網羅的に把握することが可能となり、がんの発生原因の分子レベルの解明から、新しい予防、診断、治療法の開発が期待されている。こうしたゲノム研究の発展により、同じ診断を受けた集団を対象とする医療ではなく、患者の状況をより詳細に診断して、個々の患者に最適な治療を提供すること(個別化医療)の意義がますます高まり、現実味を帯びている。分子標的薬が台頭する以前、私たちは臨床検体を用いてcDNAマイクロアレイによるゲノム包括的な腎癌の遺伝子発現プロファイルを構築し、新規遺伝子を同定するとともに、新規遺伝子を基にしたペプチドワクチン療法を実施し一定の治療効果を示した。ここ数年間の転移性腎癌に対する薬物療法の開発スピードはめざましく、治療選択肢の幅も広がっている一方で、高額さらには多様な有害事象の出現もあり、重篤な有害事象の発現予測や期待される効果を的確に予測できるようなバイオマーカーの開発が切に望まれている。
現時点で、腎癌に対する分子標的薬の治療効果を予測するバイオマーカーは確立されていないため、PSなどの臨床因子やCRPといった血液生化学検査値により予後を予測し治療法を決定し、分子標的薬投与に伴う特定の有害事象の発現程度やPET-CTを含めた画像検査によって治療の継続可否を判断しているのが現状で課題でもある。最近は新規薬剤の開発段階において、標的分子に対する創薬とともに、その標的分子の発現や変異、代謝経路の分子などを有効性や安全性評価のバイオマーカーとして用いて、コンパニオン診断薬の開発を同時に行う傾向にあり、ますますバイオマーカーに基づいた個別化医療が進んでいくことが予想されている。腎癌に対するPD-1などの免疫チェックポイント阻害剤を用いた臨床試験においても、腫瘍細胞や腫瘍浸潤細胞における免疫チェックポイント分子の発現と治療効果との相関が報告されてきており、免疫学的バイオマーカーとして有望とされている。
本シンポジウムでは、現時点における分子標的薬の課題や新規免疫療法も含めた個別化医療に向けた展望について発表予定である。

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