演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

難治性腎がんの新規治療開発-遺伝子プロファイルとバイオマーカー探索

演題番号 : OS1-4

[筆頭演者]
佐藤 悠佑:1,2 

1:京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学、2:東京大学大学院医学系研究科泌尿器科

 

癌の発生のメカニズムを探る研究は古くからなされているが、現在ではゲノム異常の蓄積に起因していると考えられている。遺伝子の変異や融合遺伝子の形成、ゲノムコピー数の変化によってタンパクの機能に質的および量的な変化が生じうる。その結果、細胞の生存や増殖に有利な変化が生じると癌の発生が促されると考えられており、慢性骨髄性白血病におけるImatinibや一部の肺癌におけるGefitinibのように、ゲノム異常に関する知見がより有効な診断法や治療法の開発に有用となりうる。
淡明細胞型腎細胞癌(ccRCC)では、3番染色体短腕の欠失とVHLの変異・プロモーターのメチル化が極めて高頻度に生じている。VHLの不活化により低酸素誘導因子(HIF)が蓄積し、これにより血管内皮成長因子(VEGF)など下流のシグナリングが活性化される。これらの分子をターゲットとした分子標的薬であるSunitinibやSorafenibが進行性の腎細胞癌の治療に用いられており一定の効果を示しているが、無効例も存在する。新たな治療薬剤の開発や、症例による既存の薬剤の使い分けの方法を確立するためには、より詳細な分子病態の理解が必要と考えられる。
近年のシークエンス技術の革新的な発展と普及を背景として、多数の臨床検体を用いて網羅的に遺伝子変異を検出し、発生や進展に関わる分子病態を解明しようとする研究が、各種の悪性腫瘍で行われてきた。ccRCCにおいても、2010年以降、全エクソン解析あるいは全ゲノム解析により、新たな知見が次々に明らかとされている。3番染色体短腕にはVHLの他にも癌抑制遺伝子が存在すると考えられていたが、長い間にわたり不明であった。しかし近年の網羅的なゲノム解析により、3p21ならびに3p14遺伝子座に存在するPBRM1BAP1SETD2に機能喪失型の遺伝子変異が生じていることが明らかにされた。また、一部のccRCCではVHLの異常が見られないが、そのような症例においてTCEB1の変異が生じていることが明らかとなった。TCEB1はElonginCタンパクをコードしており、VHLと複合体を形成する。TCEB1の変異によりVHLとElonginCの結合が阻害され、HIFが蓄積することが示されている。
このように、ccRCCの分子病態の全体像が明らかになるにつれ、臨床所見や予後との関連についても、徐々に解明が進んでいる。本シンポジウムでは、ccRCCにおける分子病態の最新の知見と、それがもたらす個別化医療への展望について紹介したい。

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