演題抄録

基調講演

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

食道がんの早期診断と内視鏡治療の進歩

演題番号 : KL5

[筆頭演者]
武藤 学:1 

1:京都大学大学院医学研究科腫瘍薬物治療学講座

 

白色光内視鏡による食道癌の早期診断は困難であったが、ヨード色素内視鏡により早期診断が可能になった。先人たちの努力によって、わが国では、数多くの早期食道癌が発見されその特徴が明らかにされてきたが、ヨード色素液は、アレルギー反応、粘膜刺激による胸痛・胸焼けなどのリスクがあり、被験者にとって侵襲が低い検査とは言いにくい。Narrow banding imaging (NBI) の登場により、これらのリスクはなくなるとともに、食道癌の内視鏡診断は容易になった。特に、拡大内視鏡を組み合わせることで、病変の領域性(brownish area)とintraepithelial papillary capillary loop の変化が客観的に視認できるようなり、高い精度で診断が可能となった。わが国で行われた白色光拡大 vs NBI拡大による多施設共同ランダム化比較臨床試験で、NBIが病変の検出力、感度、特異度とも有意に優れていることが示された。さらに、NBIは、数mm単位の病変まで検出することを可能にした。最近では、Blue light imaging (BLI)も同様のコンセプトで登場し、NBIに匹敵する診断成績が得られることが報告されている。早期発見は、これまで手術が標準治療であった食道癌治療を大きく変えた。特に内視鏡的切除術(Endoscopic resection, ER) の登場は、臓器および機能温存の低侵襲治療を可能にした。さらに内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection, ESD)の開発は、広い病変でも一括完全切除を可能にした。一方、広範な病変を切除することは医原性の食道狭窄を来すが、ステロイド内服または局注による狭窄予防効果が報告され、現在、わが国ではその比較試験(JCOG1217試験)が行われている。ESDを含むERの進歩は、診断的ERというコンセプトも生みだした。従来、外科的切除が標準治療であった臨床的粘膜下層浸潤癌に対し、診断的ERによって組織学的壁深達度を確認後、粘膜内癌では経過観察、粘膜下層浸潤であれば追加治療を行い、その予後を評価する臨床試験(JCOG0508)が行われている。食道癌に対する内視鏡治療は、化学放射線療法後の遺残再発病変にも根治的救済治療として威力を発揮している。早期発見された遺残再発病変であれば、ERで根治が期待できる。さらにリンパ節転移がない場合、粘膜下層または筋層に浸潤していても光線力学療法で根治が期待できる。食道癌の早期診断と内視鏡治療の進歩は、食道癌患者のQOLおよび根治に貢献していると言える。

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