演題抄録

International Symposium

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

小児がん患者における妊孕性温存への取り組み

演題番号 : IS1-6

[筆頭演者]
三善 陽子:1 

1:大阪大学大学院医学系研究科小児科学

 

小児がんはその種類と治療の多様性が特徴であるが、治療予後の改善に伴い、小児がん経験者(Childhood Cancer Survivors; CCS)に生じる晩期合併症が注目されている。医療者側に長期フォローアップの重要性に対する認識が高まる一方、患者自身のニーズに立てば自らの社会生活上のQOLに直結する妊孕性の問題が重大である。しかしながら本邦におけるAdolescent and Young Adult (AYA)世代を含む小児・若年がん患者の性腺機能異常と妊孕性低下に関する理解は不十分である。
そこで我々は平成26年度より厚生労働科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業(がん政策研究事業)として、「小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」班(研究代表者:三善陽子)を立ち上げた。小児・若年がん患者の診療に関わる国内の多施設の専門医(小児腫瘍医、小児内分泌医、産婦人科医、泌尿器科医、生殖医療医、腫瘍内科医、精神神経科医)からなる医療ネットワークを構築し、様々な取り組みを始めた。初年度にはCCSの性腺機能と妊孕性に関する診療の現状把握を目的として、日本小児内分泌学会の理事と評議員178名を対象に「小児・若年がん患者に対する生殖医療に関するアンケート調査」を実施した。有効回答数151名(回収率84.8%)と小児内分泌医のこの問題に対する関心の高さが示された。「性腺機能保持・妊孕性温存に向けて今後求めること(自由記載欄)」には、様々な診療科の医師と看護師・カウンセラーなど多職種の連携が必要という意見が多数寄せられた。
小児がん患者は肉体的・精神的・社会的に未熟な小児期にがんの治療をうけるため、妊孕性に関する問題は一層複雑となっている。妊孕性温存への配慮がなされないままがんの治療を開始され、治療後も患者本人に対して晩期合併症に関する説明が十分に行われておらず、長期フォローアップの必要性を認識しないことによる「受診の中断」をもたらし、成人後に初めて不妊を告知されて衝撃を受けている。がんの治療は「救命」することが最優先であるが、長期予後が改善した現在、治療後のQOL向上を視野に入れた治療戦略が求められている。がん診療と妊孕性温存の両立をめざす「がん・生殖医療(Oncofertility)」の発展のために、診療科の枠を越えた取り組みと医療界への啓発が必要である。

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