演題抄録

International Symposium

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

若年乳がん患者における妊孕性温存

演題番号 : IS1-5

[筆頭演者]
大野 真司:1 

1:公益財団法人がん研究会有明病院乳腺センター

 

【はじめに】乳がんは日本人女性において最も罹患率の高い悪性腫瘍であり、罹患数、死亡者数とも増加の一途をたどっている。乳がんは他の悪性腫瘍と比較して治療後の生存率は高く、また30歳代から40歳代の女性も多く罹患するが、このような時期にがんの治療を受けることは妊娠の年齢が遅れること、およびがん治療による卵巣機能への影響によって妊娠率の低下することになる。したがって「がんになっても子供が欲しい」という患者の思いにこたえるべく、がん患者の妊孕性保持への取り組みが重要である。
【若年乳がんの特徴と治療】40歳以下の乳がん罹患数は約5%である。乳がんは女性ホルモン依存性の疾患で、エストロゲン受容体(ER: estrogen receptor)陽性乳癌症例には内分泌療法薬が5年から10年投与することが標準治療となっている。また病期や悪性度に応じて術前もしくは術後の化学療法施行の適応となる。これら長期間の内分泌療法や化学療法による卵巣障害性によって治療後の妊孕性が低下する可能性が高い。
【妊孕性温存の取り組み】若年乳がん患者に対しては、再発防止のための治療を選択するための意思決定において、治療による妊孕性低下への影響と妊孕性温存のための方法について十分な話し合いが必要で、希望者には妊孕性温存のための卵子・受精卵凍結を行う。そのためには、①院内における患者の希望の確認と支援、②適切な情報の提供、③乳がん治療医と生殖医療担当医のネットワーク構築が必要となる。我々が行った45歳以下の乳がん患者358名のアンケート調査では、治療をうける前に、今後の妊娠・分娩について不安に感じたことはあるが47.8%、治療を受ける前に医師からがん治療によって妊娠しにくくなる可能性があるという説明をうけたことがあるが40%であった。また患者への適切な情報提供のためには、小冊子やホームページ、がん治療医と生殖医療医のための手引き書などもを発刊してきた。ネットワーク構築としては、地域における勉強会の開催と交流、他地域のネットワークの紹介などに取り組んでいる。
【おわりに】乳がんは生殖年齢の女性が罹患する疾患であり、がんの治療だけでなく妊孕性についても対応することが重要である。これからは院内における適切な情報提供とサポートシステム、そして地域における癌治療医と生殖医療医のネットワーク構築が求められている。

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