演題抄録

International Symposium

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

女性悪性腫瘍患者に対する配偶子凍結保存法の最近の進歩

演題番号 : IS1-3

[筆頭演者]
高井 泰:1 

1:埼玉医科大学総合医療センター産婦人科

 

卵子や卵巣の凍結保存は重要な妊孕性温存技術の一つとしてわが国でもガイドラインが策定され、普及しつつある。卵巣組織の凍結保存は、低侵襲な腹腔鏡下手術を用いて比較的早期に検体が採取でき、思春期以前の女児においても施行可能で、多数の卵子が得られ,女性ホルモン分泌も回復できる可能性がある。融解した卵巣組織の自家移植によって既に40名以上の生児が得られているが、移植後の生着率の改善や移植卵巣に残存する腫瘍細胞(MRD)の検出など解決すべき問題も少なくない。
一方、卵子の凍結保存では、卵子バンキング等に関連して既に数千人以上の出産例があると推定されている。しかし、排卵誘発剤による卵巣刺激がほぼ必須であり、これにより悪性腫瘍の治療が遅れることが懸念されること、多くとも20個程度の卵子しか得られないことが問題である。現状では卵子凍結・卵巣凍結それぞれに一長一短があるため、個々の症例ごとに対応することが望ましいと考えられている。
ランダム化比較試験では、受精率・妊娠率はガラス化凍結卵子と新鮮卵子で同等であるとされるが、卵子1個あたりの妊娠率は10%程度に過ぎず、加齢とともに成績が悪化するのは新鮮卵子と同様であった。また、少数の新生児の検討では先天異常などに差異を認めなかったが、受精卵の凍結では出生児体重を増加させるというエビデンスがほぼ確立しているため、卵子凍結が出生児に及ぼす影響についても十分な検証が不可欠である。
乳癌や子宮内膜癌などのエストロゲン依存性腫瘍に罹患した患者に対する排卵誘発では、aromatase阻害剤であるletrozoleを併用して血中エストラジオール濃度の上昇を避けることが一般的である。一方、エストロゲン非依存性腫瘍の場合は様々な排卵誘発法が施行されており、最近では月経周期に関係なく排卵誘発を開始する「ランダム・スタート法」によって2週間以内に採卵が可能であり、採卵数や受精卵数は同等で、妊娠率も遜色なかったとの報告もある。
がん・生殖医療では原疾患の治療成績を悪化させないことが大前提である。化学療法前の乳癌患者に対する排卵誘発は無再発生存期間を悪化させないという報告もあるが、がん・生殖医療を施行した症例のがん治療成績に関する報告はいまだ乏しいため、適応やガイドラインを慎重に議論しながら症例を蓄積・追跡し、がんの予後だけでなく妊娠予後を含めた更なる解析・検証を継続していくことが不可欠である。

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