演題抄録

教育シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の遺伝カウンセリングと診療科連携

演題番号 : ES6-6

[筆頭演者]
村上 裕美:1 
[共同演者]
三宅 秀彦:1、小杉 眞司:1,2

1:京都大学医学部附属病院遺伝子診療部、2:京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 医療倫理学・遺伝医療学

 

遺伝性の乳がんは、乳がん全体の5~10%を占める。HBOCに対するスクリーニングや治療、予防の進歩と共に社会への周知が高まり、本邦の医療機関においても施設それぞれの体制でHBOC疑い症例の拾い上げや診療が進められつつある。
当院においても、乳腺外科、産婦人科と遺伝子診療部が連携して乳がんおよび卵巣がん患者、さらにハイリスク患者に対する支援にあたっている。一次スクリーニングの多くは乳腺外科で行われ、若年発症、トリプルネガティブ乳がん、家族歴など、HBOCの可能性が高い患者に対して、治療前の時期から遺伝カウンセリングが積極的に提案される。遺伝カウンセリングは予約制のため、乳腺外科の受診後などに認定遺伝カウンセラーが予約対応を行い、この段階において、患者の主訴や家系情報を確認すると共に、病気や治療、家族への影響に対する認識などについても傾聴している。この際、がんの診断告知後や治療の前に、遺伝のことまで考えられないという方には、本人の状況に合わせていつでも相談できるということをお伝えし、担当医にその旨をフィードバックしている。術後などの落ち着いた時期に改めて遺伝カウンセリングを希望される方もおり、治療経過と共に変化する患者の体調や心理状態に配慮したタイミングでの情報提供が必要となるため、この実践において乳腺外科医師やスタッフとの連携が重要であると実感している。また、産婦人科においても、患者の遺伝学的情報を考慮した治療選択の検討が進んできている。特に、BRCA1/2の遺伝子変異を認めた症例については、産婦人科、乳腺外科と遺伝子診療部で連絡系統の取り決めがなされており、症例の個別評価や現行治療への影響の検討、フォローアップなど、密に連携して対応している。
実際の遺伝カウンセリングでは、個人のリスク評価や遺伝子検査について、変異を認めた場合の医学的対応、選択肢としてのリスク低減卵巣卵管摘出術(RRSO)、家族への影響など、クライエントのニーズに応じつつ、包括的な情報提供を行い、クライエントが十分に理解して自己決定できるように支援する。また、遺伝子検査を希望しない場合においても、本人や家族が継続的な検診などの対策がとれるよう、その人の年齢やライフステージ、価値観を尊重した話し合いを行っている。
本発表では、当院における取り組みの現状を紹介し、検診体制や長期フォローアップなど今後の課題について考察したい。

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