演題抄録

教育シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

遺伝子多型による前立腺がん発症リスクの予測

演題番号 : ES6-4

[筆頭演者]
中川 英刀:1 

1:理化学研究所統合生命医科学研究センター

 

遺伝性乳がんのBRCA1/2やリンチ症候群でのDNA修復遺伝子について、がん発症の遺伝子診断が実践され、予防的措置や検診といった介入も行われている。しかし、前立腺がんなどのcommonながんにおいてはこのような遺伝子変異が同定されていない一方で、common SNP(頻度の高い遺伝子多型)情報によるGWAS (Genome-wide Association Study) によって、全ゲノム上で100個以上もの前立腺がん発症と関連するSNPが同定されてきており、ヒトのあらゆる疾患の中でその数は最多で前立腺がんは"common SNPの病気"であると言えるかもしれない。しかし、これらcommon SNP1つ1つの前立腺がん発症リスクに寄与する割合は低く(1.1-1.8倍)、単独では診断としての価値が低い。そこで、日本人の前立腺がんと関連するSNPを16個組み合わせて、日本人の前立腺がんの発症リスクモデルを構築し、合計1万3千人のcase-control解析を行い、その精度と再現性を確認した(Akamatsu et al. PLOS One 2012)。
前立腺がんのスクリーングとしてPSA検査が広く行われているが、その診断精度、予後への寄与、医療経済的な意義などで、世界中でその是非について議論されてきている。特にPSA値が10未満のグレーゾーンに関しては、臨床の場で方針についてたびたび迷うことが見られ、明らかな方針は定まっていない。そこでゲノム情報に基づく前立腺がんの発症リスクモデルをPSAグレーゾーンの日本人男性に適応すれば、検診後に前立腺針生検を行うかどうかの判断に使えるかもしれない。今後日本で急増すると考えられるPSA検査と前立腺がん診断をより効率的に運用できるもの期待され、検診のゲノム情報による個別化を提唱する。

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