演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

癌治療におけるNCDの果たす役割

演題番号 : S6-4

[筆頭演者]
後藤 満一:1,2 
[共同演者]
宮田 裕章:2、今野 弘之:2、若林 剛:2、森 正樹:3

1:福島県立医科大学臓器再生外科学講座、2:日本消化器外科学会データベース委員会、3:日本消化器外科学会

 

がん対策推進基本計画の中に、重点的に取り組むべき課題の一つとして、放射線療法、化学療法、手術療法のさらなる充実とこれらを専門的に行う医療従事者の育成が挙げられている。特に、これらを組み合わせた集学的治療の質の向上に焦点があてられている。では医療の質とは何であろう。どのようにすればそれを評価できるであろうか。
日本外科学会を基盤とする関連学会は外科系の専門医制度と連携したデータベース事業「National Clinical Database」(NCD)を立ち上げた。このうち、消化器外科領域においては、115 の消化器外科専門医術式の中から8つの医療水準評価術式を選択し、術前リスクを調整し、医療の質(術後死亡、術後合併症の発生頻度)を評価できるシステムを構築した。この入力項目の定義は、米国のACS-NSQIP(American College of Surgeons-National Surgical Quality Improvement Program)と同じであるため、両国間比較も可能となっている。NCDは2011年1月より登録が開始され、2014年1月現在、全国3,900以上の参加施設、5,000以上の診療科のネットワークにより構成されている。登録症例数は年間120万例に及ぶ。2011年の登録症例のうち、消化器外科領域では、約2,200の診療科から約61万例の手術症例が登録され、そのうち悪性腫瘍を対象としたものは22万例、医療水準評価対象8術式の登録症例は約12万例に及ぶ。これらの術式において、手術関連死亡を予測できるリスクモデルが構築された。このモデルを用いれば、各症例の術前リスク評価が可能となるとともに、リスクを調整した手術成績を全国比較することにより各診療科のベンチマークの設定が可能となる。さらに、施設カテゴリー(指定施設、関連施設、外科医数)、Hospital volume、専門医の関与、地域、救急搬送、外傷手術、内視鏡手術、肥満、高齢者、などの各因子のアウトカムに与える影響の解析が可能である。NCDを基盤とした臓器がん登録に関しては、既に、乳癌、膵癌登録が実装されており、今後、肝癌をはじめとして、他の臓器がん登録も実装に向けて準備が進められている。平成25年末の「がん登録等の推進に関する法律」の成立によって、今後、全国がん登録データベースからの診療科への予後情報の提供とNCDへの入力により、周術期のみならず長期予後を踏まえた、がん治療の質の評価が可能となると思われる。

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