演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

子宮頸がん予防HPVワクチンの有効性と今後の課題

演題番号 : S3-4

[筆頭演者]
宮城 悦子:1 

1:横浜市立大学附属病院化学療法センター

 

20歳以上の女性の子宮頸がん検診受診率が約30%と低迷する中、日本では年間約10,000人が子宮頸がんに罹患し約3,500人が死亡していると推計されている。子宮頸がんの約70%の原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)16型と18型の感染を予防する子宮頸がん予防HPVワクチン(以下HPVワクチン)は、多くの先進国で性交渉開始前の女子を対象として国のワクチンプログラムに組み込まれており、すでに10代女性のHPV感染率の減少やこの世代の高度異形成、上皮内がんの減少が確認されている国もある。
 本邦では、2011年より公費助成による接種が広く開始され、中学1年から高校1年生の約7割に接種された。厚労省はこの接種により13,000人-20,000人の子宮頸がんの発症を防ぎ、3,600-5,600人の死亡を回避することができたと推計している。しかし、2013年3月頃からHPVワクチン接種後に全身の疼痛や不随意運動が生じた女子の存在が判明し、定期接種化から2ヶ月後の6月に厚労省の副反応検討部会での議論を受け、「HPVワクチン定期接種の積極的な勧奨を一時中止する。接種希望者については定期接種として接種可能な環境を維持する」勧告が厚労省より告知された。その後の継続調査と審議により、海外より日本で頻度が高く最大の懸念となっている慢性疼痛(1.1/10万接種)について、心身の反応によるものとの見解が示された。さらに、慢性疼痛にはリハビリテーションなど身体的アプローチと心理的アプローチを用いて、集学的な治療により重症化・長期化を防ぎ、軽快させていくことが重要であることにも言及された。定期接種化後のHPVワクチン接種率は著しく低迷しており、たとえ接種勧奨が再開された場合でも接種率が早期に回復することは期待できない。関連団体では、慢性疼痛の発症がまれであっても、接種部位以外の疼痛が遷延する場合、速やかに地域拠点病院や厚労省の指定専門施設へ紹介できるネットワークを構築するなどの対策を進めている。
 今後われわれは、国民がHPVワクチン接種の必要性とワクチン接種後の検診受診の重要性を含む包括的な子宮頸がん予防の理解を促すための教育と啓発を適切に行い、心身ともに不安定な時期にある思春期の女子が、安心してHPVワクチン接種を受けられる体制を早期に確立することが喫緊の課題である。

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