演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

我が国における遺伝性乳がん・卵巣がんに対する課題と対策

演題番号 : S3-3

[筆頭演者]
中村 清吾:1 

1:昭和大学医学部乳腺外科

 

欧米では、原発性乳癌のうち、少なくとも5-10%は遺伝性であり、その主な原因遺伝子としてBRCA1/2が同定されている。我が国では、BRCA1/2の遺伝子検査が保険適用でないために、20-30万円の個人負担となり、遺伝カウンセリングまでは受けても、遺伝子検査を受ける人は少なく、その実態が明らかでなかった。また、遺伝子検査陽性者に対する対策(たとえばMRI検診や、リスク低減手術等)は、いずれも保険適用外であることが、なお一層、本疾患に対する遺伝カウンセリング体制導入の遅延につながった。しかし、近年、若年性乳がんや、いわゆるTriple Negative 乳癌が注目され、その要因として、特に、BRCA1変異陽性との関連が取りざたされることが多くなった。そこで、2011年度から2年に渡り、日本乳癌学会において、「我が国におけるHBOCへの対策に関する研究」が行われた。その結果、遺伝子検査が行われた260 名中、BRCA1 陽性は46 名(17.3%) 、BRCA2陽性は35名(13.1%)、合わせて 30.3%に病的変異を認めた。また、欧米の報告と同様に、BRCA1陽性の62.2%がTriple negativeであり、BRCA2陽性は、非遺伝性の乳癌とほぼ同様のサブタイプであることが判明した。BRCA1/2検査が一早く診療現場に浸透している米国では、この検査を受ける体制はもとより、MRIによる検診、リスク低減卵巣卵管切除術やリスク低減乳房切除術、予防的ホルモン療法など、現行の我が国における保険医療制度では全く認められていない医療が、すでに保険でカバーされ、選択肢の一つとして行われている。また、2008年に、GINA(Genetic Information Nondiscrimination Act)が米国連邦政府の条令として認められ、保険加入及び就職において、なんら差別を受けることがないよう法的整備もなされている。今後は、さらなるデータ蓄積のもとに、欧米のBRCAPRO(http://astor.som.jhmi.edu/brcapro/)のような日本人において、BRCA1/2の検査を受けた際に、どの程度陽性と出るリスクあるかを予測するモデルを作成することが望まれる。この目標を達成するため、2013年1月に日本HBOCコンソーシアムが設立され、臨床遺伝専門医や婦人科腫瘍専門医と共同でHBOCデータベースを構築し、各種予防策を先進医療に組み込むことで、効用が明確化されたものから、順次保険適用への道を開くことが緊急の課題である。

前へ戻る