演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

大腸がんの化学予防

演題番号 : S12-3

[筆頭演者]
若林 敬二:1 

1:静岡県立大学環境科学専攻

 

 我が国に於いて、大腸がん、肺がん、乳がん等の患者数は今後も増加していくことが予想され、これらのがん発生を遅延化させるがん予防法の確立は重要な研究課題となっている。大腸がんのリスク要因としては、総脂肪、動物性脂肪、赤身の肉、加工肉、焦げた肉、アルコール飲料等が指摘されている。更に、肉を焦がすことにより生成されるヘテロサイクリックアミンも大腸がんの発生に関与していることが示唆されている。肥満を背景として内臓脂肪蓄積、血清脂質異常、高血糖等の症状を示すメタボリックシンドロームも、大腸がんのリスクを上昇させることわかり、近年、注目されている。
 大腸がんの化学予防剤は、主に大腸発がん物質であるAOMやPhIPを投与したラットまたはマウスに誘発される大腸aberrant crypt foci (ACF)および腫瘍、さらにはApc遺伝子欠損マウスに出現する腸のポリープをマーカーとして検索されている。その結果、これまでにポリフェノール、ω3多価不飽和脂肪酸、ラクトフェリン、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)等のCOX阻害剤、HMG-CoA還元酵素阻害剤およびPPARアゴニスト等、数多くの化合物が大腸発がんを抑制することが動物発がんモデルを用いた研究で認められている。
 NSAIDsの発がん抑制機構を解明することを目的として、COX-1あるいはCOX-2により生成されるプロスタノイドがどのような受容体を介して発がんに係っているかについて、受容体欠損マウスおよび受容体の拮抗剤を用いて調べられた。その結果、PGE2がEP1、EP2、EP3 およびEP4受容体を介して大腸発がんに関与していることが明らかにされている。
 大腸がんに対する化学予防剤として、当初、COX-2選択的阻害剤の有用性が示唆された。しかしながら、COX-2選択的阻害剤による心血管障害が報告され、がん化学予防剤の臨床応用の難しさが示された。一方、以前から臨床で使用されてきたNSAIDであるアスピリンは、動物実験に加えて疫学研究、介入研究でも、副作用が少なく安全性が高い大腸がん化学予防剤として、今日、特に注目されている。我々のグループでも、日本人を対象としたアスピリンの介入研究を行い、大腸がん化学予防剤としての有用性を、最近、報告した。
 本講演では、我々の研究グループで得られた成果を含め、大腸がん化学予防研究の現状と今後の課題について述べる。

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