演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

胃癌の疫学調査 H.pylori感染・糖尿病と胃癌の関係

演題番号 : S12-2

[筆頭演者]
池田 文恵:1 
[共同演者]
清原 裕:1

1:九州大学大学院医学研究院環境医学分野

 

わが国の胃癌の年齢調整死亡率は診断および治療の進歩により着実に低下しているが、罹患率でみると依然として頻度の高い悪性腫瘍の1つである。これまでの多くの研究結果から、Helicobacter pylori (H.pylori) 感染は胃癌の最も強力な危険因子と認定されているが、H.pylori感染者の多くが胃癌に罹患しないことから、H.pylori感染下に胃癌発症のリスクを増大させる他の要因が存在することが示唆される。一方、わが国では生活習慣の欧米化に伴い糖尿病の有病率が急増している。近年、高血糖もしくは糖尿病が悪性腫瘍と密接に関連しているとの研究成績が報告されているが、胃癌との関係は明らかでない。そこで本講演では、福岡県久山町で継続中の胃癌の疫学調査の成績より、高血糖・糖尿病と胃癌発症との関係についてH.pylori感染を考慮して検討する。
1988年の久山町の健診を受診した40歳以上の住民のうち、胃癌や胃切除歴がなく空腹時採血を行った2,466名を9年間追跡し、空腹時血糖レベルと胃癌発症のリスクとの関係を検討した。対象者を空腹時血糖低値群(95mg/dL以下)、中間値群(96-104mg/dL)、高値群(105mg/dL以上)の3群に分けると、男性における年齢調整後の胃癌発症率(対1,000人年)は、低値群(2.2)に比べ中間値群(7.0)と高値群(7.2)で有意に高かった。女性の胃癌発症率も低値群(0.8)と高値群(2.5)の間で有意差を認めた。また、同じ対象集団をヘモグロビン(Hb)A1cレベルで4群(4.9%以下、5.0-5.9%、6.0-6.9%、7.0%以上;JDS値)に分けて14年間追跡すると、HbA1c 5.0-5.9%群に比べ6.0-6.9%のレベルから胃癌発症の相対危険が有意に上昇した。更に、高血糖がH.pylori感染と胃癌発症の間に与える影響を検討するために、対象者をHbA1c高値(6.0%以上)とH.pylori抗体の有無で4群に層別すると、HbA1c低値かつH.pylori抗体陰性群に比べ、HbA1c高値かつH.pylori抗体陽性群で相対危険が4.03と有意に高く、H.pylori感染に高血糖が合併することにより胃癌発症のリスクが相乗的に上昇することが示唆された。
久山町における胃癌の疫学調査では、糖尿病域よりも低い血糖レベルから胃癌発症のリスクが上昇し、この関係はH.pylori抗体陽性者で顕著であった。胃癌の罹患率が高く糖尿病が急速に増加しているわが国において、高血糖および糖尿病の早期発見と適切な治療が胃癌の予防にも有効かもしれない。

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