演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

頭頸部・食道領域におけるfield cancerization現象とアルコール代謝酵素遺伝子多型

演題番号 : S12-1

[筆頭演者]
武藤 学:1 
[共同演者]
天沼 祐介:1、大橋 真也:1、堅田 親利:2

1:京都大学大学院医学研究科腫瘍薬物治療学講座、2:北里大学病院消化器内科

 

従来より頭頸部・食道領域のfield cancerization現象の危険因子は飲酒・喫煙とされてきたが、われわれは、エタノールの代謝に関わるアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)の遺伝子多型がこのfield cancerization現象に関与することを報告してきた。ALDH2はエタノールの代謝産物であるアセトアルデヒドを代謝する酵素であるが、ALDH2の一塩基多型(SNP)により、その酵素活性が大きく減弱し、ALDH2のヘテロ欠損者の場合は、野生型に比較すると飲酒後の血中アセトアルデヒドは19倍に上昇する。アセトアルデヒドは明らかな発がん物質とされるが、なぜfield cancerization現象を引き起こすかは不明である。われわれは、アセトアルデヒドが培養正常ヒト食道扁平上皮、マウス食道においてDNA損傷を起こすことを明らかにし、このDNA損傷の半減期は35時間であることも明らかにしてきた。一方、ヒト食道内に発生する前がん病変とされる異型上皮はヨード染色で不染帯として視認できるが、ヒトALDH2ヘテロ欠損者ではヨード不染が多発する。われわれは、このヨード不染をバイオマーカーにした異時性多重がん発生に関するコホート研究を展開してきたが、ヨード不染の程度が食道・頭頸部の異時性性多重がん発生に有意に関連することを明らかにした。また、このヨード不染の程度が高度になるにつれ、DNA損傷のみならずp53遺伝子の変異が多くなることを明らかにした。DNA損傷は発がん過程の第一歩とされるが、これらを元にアセトアルデヒド暴露によっておこる食道扁平上皮内の分子変化と、ALDH2の機能とDNA損傷の関連性も明らかにしつつある。本シンポジウムでは、これまでの研究成果を踏まえ、飲酒によって引き起こされるfield cancerization現象の本質に迫りたい。

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