演題抄録

一般演題(示説)

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

1個のマウス癌幹細胞の宿主移植後の増殖動態について

演題番号 : P77-19

[筆頭演者]
藤本 二郎:1 

1:兵庫県健康財団

 

癌幹細胞(TSC)仮説からすればTSC 1個で宿主を腫瘍死させることは可能と考えられるが、ヒト癌より株化されたTSCのように造腫瘍性の強いTSCですら免疫不全マウスに生着させるには少なくとも10個が必要とされている。そこでマウスFujimoto Ascites Tumor (FAT)につきTSCに富むside population (SP)細胞を用い造腫瘍性を検討した。FACS測定ではFAT中のSP画分は4.7~13.7%であった。FATは同系のC3H/Heマウスで継代維持されているが、異種のモルモットおよびFisherラットに対してFAT細胞1億個の腹腔内(ip)移植により腫瘍死させた。
FAT細胞にHoechst33342とpropidium iodideの二重染色を行い蛍光顕微鏡で観察して、いずれの蛍光をも発しないものをSP細胞とし、前者に染色されるが後者に染色されないものをnon SP細胞とした。マイクロマニュピュレーターを用いてSP細胞のみを選別し1個を同系マウスにip移植した時の生着率は2/25で、生存日数は26-27日であった。取り出した1個のSP細胞をマウスにip注射したとき、細胞が確実にipに導入されたマウスを特定できないので生着率は低値となった。1個のSP細胞より発生したFATは、100万個以上のFAT細胞をip注射する通常の方法で継代されているFATと全く同様の病理所見であった。一方non SP細胞のみ15個をマウスにip移植した時の生着率は1/4であった。以上の所見よりFAT中のTSCはSP画分に濃縮されているが、non SP画分にも少数は存在するのではないかと考えられた。
マウスTSC 1個を移植した場合の増殖曲線につき、いくつかの成長曲線のモデルを検討したところGompertz曲線に近似すると考えられたので、t を移植後の日数、y を腹腔内総腫瘍細胞数として、測定しえたデータを挿入することにより y = 8.9368×0.7393{0.6649(t-11)}という式を得た。
この曲線は yが1千個のところに変曲点があり、移植後20日で yが4億個のところでplateauに到達した。死亡直前の yは8億個。TSCは非対称分裂によりTSCと分化した癌細胞を生み出し、その結果TSCの数は維持されるが増加はせず不均一な癌細胞集団を形成する。一方、TSCは対称分裂により2個のTSCを生み出しTSC自体が増加することにより癌細胞集団の増殖を加速すると言われている。1個のマウスTSCは移植後 yが1千個となるまでは増殖曲線の勾配は穏やかで主として非対称分裂を行っており、それ以降 yが4億個になるまでは曲線の勾配は急峻となるので対称分裂が主体となると考えられた。

キーワード

臓器別:その他

手法別:基礎腫瘍学

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