一般演題(示説)
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胃癌におけるIgGの発現と臨床病理学的因子についての検討 演題番号 : P77-3
1:奈良県立医科大学消化器・総合外科学教室
【背景】生体には,出現した腫瘍細胞を発見し,排除する免疫機構が存在するという概念が存在し,これを免疫学的監視機構という.腫瘍内部に多数のリンパ球,抗体の発現を認めることがあるが,これは免疫学的監視機構により腫瘍に対して抗体が細胞傷害作用を誘導している可能性もあるが,一方でキラーT細胞の腫瘍細胞抗原への反応を遮断し、腫瘍の増殖を促進している可能性も示唆されている。胃癌周囲の間質内にもIgGを認めることがあるが,その発現の意義は不明である。【目的】胃癌におけるIgGの発現と, その臨床的意義について検討した.【対象と方法】pStageIA症例およびR2切除症例を除く,術前未治療胃癌症例142例の切除標本を抗ヒトIgG抗体で免疫組織染色を行った。癌間質におけるIgG染色細胞数を400倍視野でカウントし,検討した.【結果】1.壁深達度(pT),リンパ節転移の有無(pN),遠隔転移の有無(pM),進行度,腫瘍径,組織型,脈管侵襲の有無,年齢,性別につき検討したが,いずれも染色細胞数に有意な差は認めなかった.2.陽性細胞数を5count/400倍視野でIgG-high群とIgG-low群に分類したところ,5年生存率はIgG-high群が61.2%,IgG-low群が76.5%と,high群は有意に予後不良であった(P=0.024).5年無再発生存率は,IgG-high群が60.3%,IgG-low群が72.8%であり有意差は認めなかった(P=0.057).再発形式で見ると,腹膜再発症例の割合はIgG-high群が20.9%,IgG-low群が7.1%であり,IgG-high群で有意に高かった(P=0.026,オッズ比3.44).3.多変量解析の結果,pT,N,M因子(それぞれハザード比が,1.543,2.839,3.788.95%信頼区間が1.118-2.129,1.295-6.228,1.404-10.217)に加えて,IgG-high群は独立予後不良因子であった(ハザード比2.106,95%信頼区間1.069-4.150).【結語】胃癌間質内でのIgG発現は,pTNM因子に加えて,予後を示す因子となる可能性が示唆された。
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