演題抄録

一般演題(示説)

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

mTOR 阻害薬エベロリムスの糖代謝への影響:ヒト腎癌細胞株におけるメタボローム解析

演題番号 : P28-2

[筆頭演者]
瀧澤 昌平:1 
[共同演者]
今村 知世:1、谷川原 祐介:1

1:慶應義塾大学医学部臨床薬剤学教室

 

【目的】Mammalian target of rapamycin(mTOR)阻害薬エベロリムス(商品名:アフィニトール)は腎細胞癌および乳癌に対して有効な分子標的治療薬であるが、投与患者の約10%に高血糖が発現する。そこで本研究ではメタボローム解析により、ヒト由来腎癌細胞株へのエベロリムス曝露時の糖代謝を明らかにすることで高血糖発現機序の解明を試みた。
【方法】①ヒト腎癌細胞株ACHNにエベロリムスを曝露し、曝露前後における解糖系、TCA 回路、ペントースリン酸回路における細胞内代謝物量をキャピラリー電気泳動―四重極飛行時間型質量分析装置(capillary electrophoresis quadrupole time-of-flight mass spectrometry:CE-QTOFMS)を用いて測定し比較した。②糖代謝に関与する酵素のmRNA発現量をリアルタイムPCR法により測定した。
【結果・考察】細胞内の解糖系代謝はエベロリムス曝露により抑制された。またエベロリムス曝露によって糖代謝に関与するPKM2などの酵素のmRNA発現量が低下していた。さらにmTORシグナル伝達経路の下流に存在し、糖代謝に関連する酵素群を調節している転写因子HIF1a、MycのmRNA発現量も低下していた。一方、細胞内アミノ酸量はエベロリムス曝露によって増加しており、これは細胞内糖代謝能の低下に伴ってエネルギー代償的にアミノ酸が消費されるためと考えられた。以上より、エベロリムスによるmTOR阻害はHIF1αやMycなどの発現量を低下させ、PKM2などの糖代謝関連酵素の発現低下により、細胞内での糖代謝を抑制することが明らかとなった。細胞内糖代謝能低下は細胞内グルコース濃度を上昇させ、結果としてグルコースの細胞内取り込み量を低下させ、細胞外グルコース量を増加させると考えられる。mTORは癌細胞だけでなく正常細胞にも広く存在しているタンパク質であることから、今回確認された糖代謝能低下すなわち細胞外グルコース量の増加が末梢組織でも起こることで高血糖の発現をもたらすことが推察される。

キーワード

臓器別:腎・尿路・膀胱

手法別:分子標的治療

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