演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

脳腫瘍幹細胞研究に基づく新規治療戦略の考案

演題番号 : OS7-6

[筆頭演者]
大須賀 覚:1 
[共同演者]
サンペトラ オルテア:1、松村 明:2、佐谷 秀行:1

1:慶應義塾大学医学部遺伝子制御研究部門、2:筑波大学医学医療系脳神経外科

 

神経膠芽腫は脳腫瘍の中でも予後が悪く、外科的摘出に加えて化学療法と放射線照射を含めた集学的治療を行っても、患者の平均生存期間は1年ほどにしか至らない。神経膠芽腫の特徴の一つとして腫瘍組織を構成する細胞の不均一性があげられる。この不均一性の原因としては、今まで多段階的な遺伝子変異が主因と考えられてきた。しかし、近年の幹細胞研究手法の発展とともに、癌の中には幹細胞様細胞が存在しており、これらの細胞群が自己複製や分化などを行うことで、遺伝子変異とは異なったレベルで腫瘍の不均一性に寄与していることが示されてきた。脳腫瘍でも2004年に脳腫瘍幹細胞の存在が証明され、急速にその生物学的な特徴に関した研究が進んできている。
この脳腫瘍幹細胞が近年注目されている要因の一つは、他の腫瘍細胞に比べて高い治療抵抗性を持っていることである。根治不能な神経膠芽腫などの悪性脳腫瘍を克服するためには、この脳腫瘍幹細胞を駆逐する治療戦略の構築が必要であると考えられる。脳腫瘍幹細胞の治療抵抗性の原因としては、すでにいくつかのメカニズムが報告されている。そのほとんどは、GSCに元来備わっている幹細胞特性に関するもので、増殖遅延、DNA障害修復能、酸化ストレス回避能などが関与していると報告される。
最近になり、元来備わっている幹細胞の特徴以外にも、治療刺激を受けることで新たに誘導される抵抗性メカニズムが存在するのではと考えられており、この適応反応をターゲットとした研究が進んでいる。我々は、がん抑制遺伝子Ink4a/Arf欠損マウスの神経幹細胞に、代表的な癌遺伝子である変異型Rasを遺伝子導入して作製した神経膠芽腫モデルを利用し、反復放射線照射を行った際に脳腫瘍幹細胞が適応反応として、Insulin-like growth factor 1(IGF1)受容体シグナルの活性化を介した放射線抵抗性を獲得することを解明している。本シンポジウムでは、脳腫瘍幹細胞の治療刺激に対する適応反応を中心に概説し、難治性脳腫瘍に対しては、脳腫瘍幹細胞の元来からの維持に関わるシグナル系と、治療時の適応反応に関与するシグナル系の両方を抑制するシステミックな治療戦略が必要であることについて述べる。

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