演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

脳腫瘍形態学的診断の変遷と治療戦略

演題番号 : OS7-1

[筆頭演者]
杉山 一彦:1 

1:広島大学病院がん化学療法科

 

病理標本の光学顕微鏡での観察は日本全国のほぼ全ての病院で保険診療として遂行可能な普遍的な検査法である。また臨床医は意志さえあれば短時間で観察や学習を終了することもできる。この点が遺伝子検査や分子病理検査と大きく異なる点である。特異度が低い(観察者によって診断が異なる場合もある)ことを差し置いても、充分メリットのある検査法である。今回はH&E染色、商業的に入手可能な抗体を用いた免疫組織化学染色(ICH)をもとにした脳腫瘍診断とその臨床的意義について以下の3分野において考察した。(1)神経膠腫gr 2/ 3/ 4:過去30年に渡って進歩してきた点はいきなりgr4となるprimary pathwayとgr2から徐々に悪性転化するsecondary pathwayが存在することと、astrocytic/ oligodendrocytic/ oligoastrocyticの3系が存在することである。前者はIDH1/2の変異をICHで観察することで大まかな分類が可能となった。これはTCGAなどのいわば力技での解析が大きな貢献を果たした。後者は日々の病理医を含む臨床医の努力の結晶である。Perinuclear heroを有する細胞の同定とp53抗体を用いたICHを用いることで、ほぼ診断の確信を得ることが可能である。(2)髄芽腫desmoplastic/ nodular typeとsonic hedgehoc type:髄芽腫の病理診断は形態学的観察をもとにした4分類が定着しているが、近年網羅的遺伝子解析を用いた4分類が新たに提唱されている。後者は精緻な理論構築を持つが、予後不良なgroup 3、group 4を分類するkey moleculeが同定できていないことが難点である。形態診断の前者と遺伝子解析の後者が唯一一致している群がdesmoplastic/ nodular typeとgroup 2(sonic hedgehoc typ)である。ただしgroup 2(sonic hedgehoc typ)はp53遺伝子変異が加わるとより生物学的に難治となる。チロシンキナーゼ阻害薬vismodegibの臨床応用が期待される亜型である。(3)迅速病理診断:本邦でBCNU waferが保険適応となり、脳腫瘍、特に神経膠腫の術中迅速病理診断の精度がにわかに脚光を浴びている。術中迅速病理でgr 3以上の診断がwafer留置の必須要件となったためである。病理指導医クラスが常時術中迅速病理診断を行っている医療施設は本邦においては極めて稀であり、人材育成や遠隔病理診断等を含めたインフラ整備は急務である。また、永久標本との所見解離等の迅速病理特有の事象教育や手術チームの適切なサンプリング/ ナンバリング教育も必須と考える。

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